No.43


11 月○日(晴)
動物病院で診療していると、
様々な癌を診ますが、
今日は立て続けに口腔内の腫瘍を診ました。

口腔内に限らず、最近は腫瘍が増えましたね。
腫瘍性疾患の増加については、一般には
「わんこにゃんこの寿命が昔に比べて延びたから」、
と言われているけど・・・、
個人的にはちょっと安易すぎる説という気もします。

ところで
口腔のがんといえば、フロイトが有名です。
66歳で発症して以降、83歳で亡くなるまでに、
なんと
33回の外科的切除術を繰り返しています。
平均したら半年ごとに切っていたということか・・。

当時すでにモルヒネが用いられていたとはいえ
手術に耐えたフロイトもすごいけど、
がんの再発に果敢に挑戦した外科医は驚異的!



11 月○日(雨)

保護されているわんこ(3歳くらい、♀、8s)です。
ただいま里親募集中!
11 月○日(雨)
寺田寅彦の名言に、
「災害は忘れた頃にやってくる」
というのがあります。

一方、獣医学界でよく知られた格言で、
「アジソンは忘れた頃にやってくる!」
というのがあります。

アジソン病とは副腎のホルモンの分泌障害で、
診断に際し常に頭の中で意識しない限り、
非常に見逃されやすい疾患の代表格です。
内分泌疾患の中ではかなり少ないですから。

診断さえ正しければ治療にはよく反応し、
比較的速やかに回復してくれるのですが、
獣医師の臨床経験がモノをいう疾患だけに
2.3軒の動物病院をハシゴしたすえに、
ようやく診断に至るなんてことも珍しくありません。

というわけで、
今日が私にとっての「忘れた頃」なのか、
アジソンクリーゼを診ました。


もちろん、元気になりましたよ(^^♪
11月〇日(曇)
「君の名は」が大ヒットして以降、
小海町が聖地と化しているらしい。

小海町には
松原湖という素晴らしい湖があり、
冬になると完全結氷して、「天然のスケートリンク」となります。
私が子供の頃は、ここがまさしく
「スピードスケートの聖地」でした。

小学生の頃、私は本気で
スピードスケートのオリンピック選手になることを
目指していました。

学校の勉強はまったくしませんでしたが、
スケートだけは6歳から12歳まで休まず
クラブ活動一色の生活。

4月〜11月は陸トレで筋力アップに励み、
12月〜3月は氷上トレーニングで
松原湖と軽井沢スケートセンターに通い続けました。

一方、獣医師となってからは狂犬病予防注射業務で、
小海町の町内のあちらこちらを、
役場担当者と一緒に巡回したことがあります。

小海町はよき日本の原風景といった感じ。
ゆったりした時間が流れていて、癒されます。

11 月24日(雪)
いきなりの雪です (-_-)。
せっかくの休みも雪かき…。
軽井沢の積雪は21p、
今からこれでは、今後どうなるんだろう。
出来れば、雪は少なくあってほしいなあ。

もうそろそろ除雪機を準備しようかな。

元来操縦や操作、運転は大好きなので
クルマ同様、除雪機の操作も好きですが、
寒さがカラダにこたえる、今日この頃です。

11月〇日(曇)
2週続けて招待セミナーに行ってきました。
先週は
明治製菓ファルマの麻酔に関するもの、
そして今日は
フジフィルムの神経学に関するもの。
両社とも動物病院業界においてはビッグな存在。

セミナーにはさほど驚くような内容は
含まれていませんでしたが、
帰りの新幹線に乗るべく
東京駅の地下を歩いていたら、
人ごみの中から突然
「よう、きくち!」の呼びかけが…。

振り返ると高校時代の親友(内科医)がいました。
この偶然にはちょっとびっくり。

これだけでも驚きなのに、
なんと帰りの新幹線も同じ。
座席もグリーンの1Dと5Dと近い。
こんな偶然って、あるんですね。

12 月〇日(曇) 獣医学界最大のミステリー?

今日は猫のぶー太郎がやって来た。
ぶー太郎は7歳になるにゃんこで
甲状腺機能亢進症を患っています。

ところで
「猫の甲状腺機能亢進症」という病気、
非常に新しい病気と言われています。
実際1979年に論文報告があって、
その後1980年を境に急増した疾患です。

なぜそんなことが言えるかというと、
過去100年間
ぐらいの猫の剖検組織を
くまなく検索して、徹底的に調べなおした
研究者がいるんです(すごい根気!)。

そして、

確かに1979年以前の100年間にはない疾患

であることが、学術的に証明されました。

いまではこれが世界の常識。

私がこの事実を知ったのは、内分泌疾患の
第一人者、M教授(東大)のセミナーでしたが、
当時も今も、その原因は全く不明のまま。

不思議な話ですよね。
1979年、猫の世界に何が起こったの?

たかだか30〜40年で猫の身体機能に
遺伝的な変化が生じることは考えにくく、
現状、誰もが環境説を唱えているようです。

環境が原因であるにしても、具体的に水なのか、
フードなのか、土壌なのか、化学物質汚染なのか、
まったく分かっていません。

ちなみに日本での猫の8歳以上の有病率が3%、
欧米(特に米国)での有病率が15%です。
けっこう地域性も大きな疾患なんです。

甲状腺疾患はこれ以外にも不審、不明な点が多く、
知れば知るほど、実にミステリアスな疾患です。

私が生きている間にこの謎は解明されるのでしょうか?
12 月〇日(晴) 日経新聞の報道によれば、
京都産業大学が獣医学部の設置を
文科省・内閣府に申請したみたい。
以下は関連記事の抜粋。

「京都産業大学で獣医学部を新設する構想が浮上。
動物病院ではなく、ヒト向けの新薬開発や
iPS細胞研究で家畜を扱う先端分野の
獣医師を育成する。

現在獣医学部新設は文科省により抑制されているが、
国家戦略特区の枠組みを使って規制緩和できるように、
京都府は内閣府などに要望した。

実現すれば、京産大は京都府綾部市に研究所を
設立し、府の畜産センターとの連携を図る方針だ。」

特定分野の獣医師が足りないから育成する
という趣旨らしいけど、医師の偏在と同じく、
獣医師も偏在しているからなあ〜。

数さえ増えれば、新薬開発やiPS細胞研究に携わる
獣医師が増える、とは思えないけど・・・。
動物病院勤務の先生が増えるだけかも。
日経の報道となれば、情報は確かなのかな?

ところで京産大ってどんな大学か知らなくて
大学にいる友人に聞きました。
友人Aいわく、
「鳥インフルエンザの権威の大槻先生がいるよ」
友人Bいわく、
「つるべの母校」

いずれも正解らしい。
12 月〇日(曇) 今朝は地震で目が覚めました。

ところで地震に縦揺れと横揺れ(P波とS波だっけ?)
があることは広く知られていますが、
眼球にも縦揺れと横揺れがあるのをご存知ですか?

いわゆる
「眼球振盪」です。
実は縦揺れと横揺れ以外に軸回転という動きもあり、
揺れ方は合計3種類。

ただし、臨床的には横揺れと回転は同一とみなすので、
実質的には、縦と横の2種類です。

この縦揺れ(垂直方向)と横揺れ(水平方向)、
単に方向が違うだけと思われがちですが、
この方向差は非常に重要な意味を持ちます。

あくまで一般論ですが、
縦揺れ(垂直眼震)は中枢神経系(小脳)を含む異常で
基本的に予後不良
の場合が多いんです。
垂直方向の震盪は重篤な疾患の存在を示唆する、
といえます。

一方、
横揺れ(水平眼震)は病変が末梢神経系
に限局している
ことがほとんどで、
意識障害を認めないかぎり、
予後は良好

とはいえ何事にも例外はありますから、素人判断は禁物。

眼球振盪は高齢犬には結構な確率で認められますし、
また特定の種類の猫にはありふれた症状ですが、
認めた場合には、速やかに受診してください。
12 月〇日(曇) 溶ける石と溶けない石

今日は8歳のマルチーズ(♀)のフルールちゃんがやってきた。
先日の検査で膀胱に結石が4個ほどあることがわかっています。

ところで膀胱結石のわんこ・にゃんこを診る際に、
獣医師が最もこだわる点はその石の組成。

エコー画像やレントゲン画像で形態を確認した上で、
尿のpHを調べ、食事内容を知ることが出来れば
組成(=結石の種類)はほぼ推定可能。

犬と猫の2大膀胱結石は、今も昔も
●ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)と
●シュウ酸カルシウム。

上記2つで膀胱結石症例全体の75%を占めます。

この2つの結石はとても対照的な性格で、
ストラバイトはアルカリ尿で生成されやすく
食事で溶かすことができる結石であり、
外科的な摘出はもちろんのこと、
内科的な治療、すなわち食事による溶解が可能。

一方、シュウ酸Caは酸性〜弱酸性尿でできやすく
絶対に溶けない結石の代表選手。
内科療法は一切通用しません。
すなわち治療は外科的摘出のみ。


かつて「結石といえばストラバイト」というほど多く、
フードメーカーがストラバイト対策に走りすぎ、
今ではストラバイト結石は減りましたが、
逆にシュウ酸Caは増えている状況。

というわけでシュウ酸Caはちょっと厄介な石です。
シュウ酸Caは厳密な意味で生体内でどのように形成
されるのか解明されておらず、未解決な部分を含んでいます。

食事に含まれるシュウ酸が体内でカルシウムと結合すると
主張する外因説と、食事とは関係なく体内でシュウ酸が
合成されて、これがカルシウムと結合するという内因説。
いずれが正しいのか、研究者の間でも見解が一致しません。
完璧な予防方法は存在しない、ということになりますね。
謎の多い結石といわれるゆえんです。

ところでフルールちゃんのケースは、シュウ酸Caの可能性が
高いので、今後は外科的な処置が必要かもしれない・・・。

※この日誌に登場するわんこ・にゃんこは基本的に仮名です。