11 月○日(晴) |
動物病院で診療していると、
様々な癌を診ますが、
今日は立て続けに口腔内の腫瘍を診ました。
口腔内に限らず、最近は腫瘍が増えましたね。
腫瘍性疾患の増加については、一般には
「わんこにゃんこの寿命が昔に比べて延びたから」、
と言われているけど・・・、
個人的にはちょっと安易すぎる説という気もします。
ところで口腔のがんといえば、フロイトが有名です。
66歳で発症して以降、83歳で亡くなるまでに、
なんと33回の外科的切除術を繰り返しています。
平均したら半年ごとに切っていたということか・・。
当時すでにモルヒネが用いられていたとはいえ
手術に耐えたフロイトもすごいけど、
がんの再発に果敢に挑戦した外科医は驚異的!

|
11 月○日(雨) |

保護されているわんこ(3歳くらい、♀、8s)です。
ただいま里親募集中!
|
11 月○日(雨) |
寺田寅彦の名言に、
「災害は忘れた頃にやってくる」
というのがあります。
一方、獣医学界でよく知られた格言で、
「アジソンは忘れた頃にやってくる!」
というのがあります。
アジソン病とは副腎のホルモンの分泌障害で、
診断に際し常に頭の中で意識しない限り、
非常に見逃されやすい疾患の代表格です。
内分泌疾患の中ではかなり少ないですから。
診断さえ正しければ治療にはよく反応し、
比較的速やかに回復してくれるのですが、
獣医師の臨床経験がモノをいう疾患だけに
2.3軒の動物病院をハシゴしたすえに、
ようやく診断に至るなんてことも珍しくありません。
というわけで、
今日が私にとっての「忘れた頃」なのか、
アジソンクリーゼを診ました。
もちろん、元気になりましたよ(^^♪ |
11月〇日(曇) |
「君の名は」が大ヒットして以降、
小海町が聖地と化しているらしい。
小海町には松原湖という素晴らしい湖があり、
冬になると完全結氷して、「天然のスケートリンク」となります。
私が子供の頃は、ここがまさしく
「スピードスケートの聖地」でした。
小学生の頃、私は本気で
スピードスケートのオリンピック選手になることを
目指していました。
学校の勉強はまったくしませんでしたが、
スケートだけは6歳から12歳まで休まず
クラブ活動一色の生活。
4月〜11月は陸トレで筋力アップに励み、
12月〜3月は氷上トレーニングで
松原湖と軽井沢スケートセンターに通い続けました。
一方、獣医師となってからは狂犬病予防注射業務で、
小海町の町内のあちらこちらを、
役場担当者と一緒に巡回したことがあります。
小海町はよき日本の原風景といった感じ。
ゆったりした時間が流れていて、癒されます。
|
11 月24日(雪) |
いきなりの雪です (-_-)。
せっかくの休みも雪かき…。
軽井沢の積雪は21p、
今からこれでは、今後どうなるんだろう。
出来れば、雪は少なくあってほしいなあ。
もうそろそろ除雪機を準備しようかな。
元来操縦や操作、運転は大好きなので
クルマ同様、除雪機の操作も好きですが、
寒さがカラダにこたえる、今日この頃です。
|
11月〇日(曇) |
2週続けて招待セミナーに行ってきました。
先週は明治製菓ファルマの麻酔に関するもの、
そして今日はフジフィルムの神経学に関するもの。
両社とも動物病院業界においてはビッグな存在。
セミナーにはさほど驚くような内容は
含まれていませんでしたが、
帰りの新幹線に乗るべく
東京駅の地下を歩いていたら、
人ごみの中から突然
「よう、きくち!」の呼びかけが…。
振り返ると高校時代の親友(内科医)がいました。
この偶然にはちょっとびっくり。
これだけでも驚きなのに、
なんと帰りの新幹線も同じ。
座席もグリーンの1Dと5Dと近い。
こんな偶然って、あるんですね。
|
12 月〇日(曇) |
獣医学界最大のミステリー?
今日は猫のぶー太郎がやって来た。
ぶー太郎は7歳になるにゃんこで
甲状腺機能亢進症を患っています。
ところで
「猫の甲状腺機能亢進症」という病気、
非常に新しい病気と言われています。
実際1979年に論文報告があって、
その後1980年を境に急増した疾患です。
なぜそんなことが言えるかというと、
過去100年間ぐらいの猫の剖検組織を
くまなく検索して、徹底的に調べなおした
研究者がいるんです(すごい根気!)。
そして、
確かに1979年以前の100年間にはない疾患
であることが、学術的に証明されました。
いまではこれが世界の常識。
私がこの事実を知ったのは、内分泌疾患の
第一人者、M教授(東大)のセミナーでしたが、
当時も今も、その原因は全く不明のまま。
不思議な話ですよね。
1979年、猫の世界に何が起こったの?
たかだか30〜40年で猫の身体機能に
遺伝的な変化が生じることは考えにくく、
現状、誰もが環境説を唱えているようです。
環境が原因であるにしても、具体的に水なのか、
フードなのか、土壌なのか、化学物質汚染なのか、
まったく分かっていません。
ちなみに日本での猫の8歳以上の有病率が3%、
欧米(特に米国)での有病率が15%です。
けっこう地域性も大きな疾患なんです。
甲状腺疾患はこれ以外にも不審、不明な点が多く、
知れば知るほど、実にミステリアスな疾患です。
私が生きている間にこの謎は解明されるのでしょうか?
|
12 月〇日(晴) |
日経新聞の報道によれば、
京都産業大学が獣医学部の設置を
文科省・内閣府に申請したみたい。
以下は関連記事の抜粋。
「京都産業大学で獣医学部を新設する構想が浮上。
動物病院ではなく、ヒト向けの新薬開発や
iPS細胞研究で家畜を扱う先端分野の
獣医師を育成する。
現在獣医学部新設は文科省により抑制されているが、
国家戦略特区の枠組みを使って規制緩和できるように、
京都府は内閣府などに要望した。
実現すれば、京産大は京都府綾部市に研究所を
設立し、府の畜産センターとの連携を図る方針だ。」
特定分野の獣医師が足りないから育成する
という趣旨らしいけど、医師の偏在と同じく、
獣医師も偏在しているからなあ〜。
数さえ増えれば、新薬開発やiPS細胞研究に携わる
獣医師が増える、とは思えないけど・・・。
動物病院勤務の先生が増えるだけかも。
日経の報道となれば、情報は確かなのかな?
ところで京産大ってどんな大学か知らなくて
大学にいる友人に聞きました。
友人Aいわく、
「鳥インフルエンザの権威の大槻先生がいるよ」
友人Bいわく、
「つるべの母校」
いずれも正解らしい。
|
12 月〇日(曇) |
今朝は地震で目が覚めました。
ところで地震に縦揺れと横揺れ(P波とS波だっけ?)
があることは広く知られていますが、
眼球にも縦揺れと横揺れがあるのをご存知ですか?
いわゆる「眼球振盪」です。
実は縦揺れと横揺れ以外に軸回転という動きもあり、
揺れ方は合計3種類。
ただし、臨床的には横揺れと回転は同一とみなすので、
実質的には、縦と横の2種類です。
この縦揺れ(垂直方向)と横揺れ(水平方向)、
単に方向が違うだけと思われがちですが、
この方向差は非常に重要な意味を持ちます。
あくまで一般論ですが、
縦揺れ(垂直眼震)は中枢神経系(小脳)を含む異常で
基本的に予後不良の場合が多いんです。
垂直方向の震盪は重篤な疾患の存在を示唆する、
といえます。
一方、横揺れ(水平眼震)は病変が末梢神経系
に限局していることがほとんどで、
意識障害を認めないかぎり、予後は良好。
とはいえ何事にも例外はありますから、素人判断は禁物。
眼球振盪は高齢犬には結構な確率で認められますし、
また特定の種類の猫にはありふれた症状ですが、
認めた場合には、速やかに受診してください。
|
12 月〇日(曇) |
溶ける石と溶けない石
今日は8歳のマルチーズ(♀)のフルールちゃんがやってきた。
先日の検査で膀胱に結石が4個ほどあることがわかっています。
ところで膀胱結石のわんこ・にゃんこを診る際に、
獣医師が最もこだわる点はその石の組成。
エコー画像やレントゲン画像で形態を確認した上で、
尿のpHを調べ、食事内容を知ることが出来れば
組成(=結石の種類)はほぼ推定可能。
犬と猫の2大膀胱結石は、今も昔も
●ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)と
●シュウ酸カルシウム。
上記2つで膀胱結石症例全体の75%を占めます。
この2つの結石はとても対照的な性格で、
ストラバイトはアルカリ尿で生成されやすく
食事で溶かすことができる結石であり、
外科的な摘出はもちろんのこと、
内科的な治療、すなわち食事による溶解が可能。
一方、シュウ酸Caは酸性〜弱酸性尿でできやすく
絶対に溶けない結石の代表選手。
内科療法は一切通用しません。
すなわち治療は外科的摘出のみ。
かつて「結石といえばストラバイト」というほど多く、
フードメーカーがストラバイト対策に走りすぎ、
今ではストラバイト結石は減りましたが、
逆にシュウ酸Caは増えている状況。
というわけでシュウ酸Caはちょっと厄介な石です。
シュウ酸Caは厳密な意味で生体内でどのように形成
されるのか解明されておらず、未解決な部分を含んでいます。
食事に含まれるシュウ酸が体内でカルシウムと結合すると
主張する外因説と、食事とは関係なく体内でシュウ酸が
合成されて、これがカルシウムと結合するという内因説。
いずれが正しいのか、研究者の間でも見解が一致しません。
完璧な予防方法は存在しない、ということになりますね。
謎の多い結石といわれるゆえんです。
ところでフルールちゃんのケースは、シュウ酸Caの可能性が
高いので、今後は外科的な処置が必要かもしれない・・・。 |