福島の原発事故に終息の気配がなく、むしろ飲水制限から混乱は広がるばかりです。
都内の動物病院では、「水道水を愛犬に飲ませても大丈夫?」という電話相談が殺到しているとか。
長野県内では放射性物質による水の汚染はありませんが、当院でも軽井沢の別荘と都内を往復している方々からは、同様の質問を受けることが増えました。
この疑問に対しては、私も正直言って大丈夫か否か、本当のところはわかりません。少なくとも今の段階で、放射性物質(とくにヨウ素131、ヨウ素134)摂取による内部被爆と愛玩動物との関連性についての調査報告はありませんから。
むしろ私のほうが聞きたいくらいです。
ただ、ヒトについては疫学調査などをふまえて政府は「現段階で水道水は安全」とか「ヨウ素131を含む牛乳を1年間摂取し続けてもCT1回分の被爆線量で安全」と言っています。
でも、これっておかしな論理です。
CTなどによる医療被曝は健康へのメリットが被爆による不利益を上回るから規制から例外的に除外されるのであって、必ずしも医療被曝=安全というわけではありません。
生体に対しては、被爆はないほうが好ましいにきまっています。
また、CTは基本的に外部被爆ですが、現在問題となっているヨウ素131、ヨウ素134は、いくら半減期が短いとはいえ内部被爆です。
この点については、チェルノブイリの医療支援の経験を踏まえて、阪大教授の野村氏が新聞紙上で政府対応に疑問を呈しています。
最近は動物でもCTによる画像診断が二次医療機関では当たり前になってきましたが、通常のX線検査より格段に被爆線量が多くなるので、取り扱いに際しては、よりいっそうの慎重さが求められます。
ここで国際放射線防護委員会(ICRP)によるCT取り扱いに関する注意喚起を記載します。
「胸部CTの実効線量は8mSvでこれは胸部X線撮影の400回分に相当する。そして骨盤部等のCT検査では20mSvにもなる。CT検査における組織吸収線量は、疫学調査でがんの発生率が増加するとされたレベルに近いかそれ以上になることもありうる。」
原子力発電所のトラブルが一刻も早く終息することを切に願う。