今日はフレンチ・ブルのゴロウ君(♂、6才がやってきた。1カ月前くらいから左眼が赤く充血しており、ちかくのお医者さんで角膜炎との診断を得て点眼を続けるものの、最近は角膜全体が白く濁って3日前からは痛みも出てきて心配とのこと。やんちゃなゴロウ君、今まで眼を散々いじられているためか検査を嫌がってしまい、なかなか検眼させてくれません。そこで飼い主さんの承諾を得て、点眼麻酔に加えて鎮静処置を実施、拡大鏡でつぶさに角膜表面を観察すると、なんと角膜上皮(約0・05~0.1mm)が所々千切れてルーズに剥がれかかっており、その下の角膜実質(約0・4mm)にほとんど付着していません。

いけませんね、典型的な”ボクサー潰瘍”です。これはボクサーやフレンチブルなどのブルドック系犬種に多く発生するといわれるいまだ原因不明の疾患、別名”難治性無痛性潰瘍”のこと。

改めて準備しなおした上で、セオリー通りの外科治療を施しましたが、言うまでもなく今後も通院加療が必要です。また両眼に発生することも多いので、これまで以上に右目にも注意をはらわねばなりません。がんばれ、ゴロウ君!

ところでこの疾患は”難治性無痛性潰瘍”と呼ばれているにもかかわらず、痛みを認めるケースも少なくありません。ただ、症状からみてもっと強い痛みがあっても不思議はないので、なぜ痛みが軽いのかははっきりわかっていません。ただ、中年以降に発症する事が多いので、中年以降は痛みに鈍感になるとか、慢性化すると痛みが急性期よりも軽減すると言われています。