小鳥の診療・・・その②

ここ5~6年で小鳥の診療は劇的に進化しました。

私の学生時代はもちろん、都内で代診していた頃は院長から、「小型鳥類(特に体重40g以下の鳥)には絶対筋肉注射をしてはならない」と厳命されていたものです。なぜなら、「注射の痛みで容易にショック死するから。」
これ当時の医学的常識。

ところがそんな中でも、古くから都内で小鳥の専門病院を開いていたT先生は積極的な治療で知られ、カナリアやセキセインコ、文鳥に対し筋肉注射どころか、なんと麻酔まで自由に使いこなしていました。

小鳥の診療では大変有名な先生で、十数年前の話ですが、あるTVドラマの中で、亡くなった小鳥がキリストのごとく復活して、大空に飛び去るシーンの撮影にT先生の麻酔技術が使われて、小鳥を熱心に診療する獣医師の間では、おそらくケタミン(注射用麻酔薬/麻薬)を希釈して注射したのではないか、と話題になりました。

私は晩年のT先生しか知りませんが、何回か東獣の主宰する講習会に参加した際、「鳥は皆さんが思っている以上に丈夫な生き物です。積極的に治療してください。」と口癖のように言っていたことを思い出します。

そのT先生も、もう亡くなられて久しい。
先生の遺志が後進に伝わったのか、あるいは時代の要請なのかわかりませんが、いまや小鳥の診療は「筋肉注射当たり前、必要に応じて点滴まで行なわれる時代」になりました。
現代は、小鳥にとってはかつて無いほど幸せな時代だと思う。