私の就職活動記・・・⑤

卒後私は吉祥寺のN先生の紹介で葛飾区内の動物病院に就職しました。院長のI先生は非常に仕事熱心な方でしたが、それもそのはず、元々は日本獣医畜産大学(2年ほど前、日本獣医生命科学大学というなんだか訳のわからない名前に名称変更したもよう)で薬理学の教鞭をとられていた学究の人。かつて大学で師事していた先生が、石原慎太郎の小説「生還」のモデルとなったH先生(小説の中では田沼先生だっけ)とか。I先生は当時から動物の腫瘍性疾患に造詣が深く、動物の悪性腫瘍について今でこそ一般的になった化学療法剤は言うに及ばず、丸山ワクチンや漢方に至るまで積極的に取り入れて、当時としてはかなり先進的な研究をされていました。

ところで当時の私は、私をI先生に紹介したN先生は外科出身なのに派手にメスを振るう事をよしとせず内科療法を限界まで推し進めるところがあり、一方I先生は薬理学教室出身でありながら内科療法・薬物療法にこだわることなく、むしろ元気に(!)メスをふるっていたことを不思議に思っていました。その後、日々の診療をとおして私が理解したのは、外科出身であるがゆえにN先生は外科の限界を知っている、薬理出身であるがゆえにI先生は内科治療の限界を知っている、ということでした。お二方とも現在でもお元気で日常診療をされておりますが、いまでも私の目標とする先生方であると同時に、私の診療スタイルのルーツであることに変わりはありません。