見た目がすべて・・・①
以前「人間は見た目が9割」みたいな本が話題を集めたことがありましたが、じつは獣医師の診療の現場で、まさしく「見た目がすべて」を実践している分野があります。
眼科です。眼科診療は基本的に肉眼での観察(=といっても、後述する光学機器を通しての観察です)が基本です。
眼の構造や成り立ちは体のほかの部分と比べて極めて特異的であり、じつは”眼科診断の3種の神器”といわれる、双眼スリットランプ・額帯式の双眼倒像鏡・トノペン(眼圧測定器)の使用により、まず9割以上の確率で正確な診断が下せます。
ところがこの”3種の神器”、あまり普及していません。業者によれば全国的な普及率は20%くらいだとか・・・。
都内のように眼科専門医が多く存在する地域なら、かりに”3種の神器”が院内になくても近隣の専門家に紹介すれば済みますが、それ以外の地域(=むしろ、都内のような地域が珍しい)ではそうはいきません。正確な診断を下したうえで治療をおこない、より高度な処置を必要とするものであれば、臨機応変に専門医もしくは大学病院を紹介することになります。
地方都市では眼科診療の割合が比較的少ないうえに、一方で”3種の神器”購入はやっぱりそれなりの高額投資になりますから、病院経営の面から見たら、今後もこれらの機器の普及は難しいのかもしれません。
個人的には、「見た目ですぐに正しい診断が得られること」、「早期治療で視力を失わずに済むケースが多いこと」を考えると、まったく高額投資ではないと思っています。
というのも、正しい診断がなされない為に、正しい治療がなされずに苦しむワンコが田舎では意外なほど多いのです。
先日も緑内障で失明し、さらに痛みがひどく食欲まで減退したクッキーちゃん(柴犬、10歳、♀)がやってきましたが、かかりつけでは結膜炎の治療をしていたということでした。
少なくとも最初の病院で眼圧を測定できたら、鑑別診断として緑内障も考慮したのではないかと悔やまれます。クッキーちゃん、本当に残念 (-_-;)。