きょうはトイプードルのクリステルちゃん(♀、6ヵ月齢)の骨折の整復手術をしました。じつはクリステルちゃん、飼い主さんの自転車のカゴから落ちて右前肢をポッキリと折ってしまいました。
体重2.2kgの超小型犬ですから、前肢(トウ骨・尺骨)のような細い骨は、強い外力に対してはひとたまりもありません。この手の骨折は要注意です。
なぜならば、中型犬や大型犬の骨折とちがい、超小型犬の骨折は最初にキッチリ治さないと、その後癒合不全をおこしたり、最悪肢が壊死してしまうことがあるのです。
クリステルちゃんの場合、骨はケンタッキーフライドチキンよりもひとまわり小さく細い骨でしたが、幸い幅3mm長さ28mmのマイクロプレートと直径1.5mmのミニスクリューがなんとか適用出来たので、予定通りプレートによる内固定法で正確に治しました。
今回骨がかなり細くて一旦始めたらやりなおしのきかない手術だけに、整復作業中は緊張で疲れを全く感じていなかったのですが、手術終了と同時に全身からどっと汗が噴き出してきた。
ところで今回プレートによる内固定法が使えなかったら、その時は思い切ってIlizarov型創外固定器を使おうと覚悟していました。これは究極の骨折治療器具です(下画像)。
通常の創外固定器と比べても格段に精巧な設計で、骨の微妙な角度を修正したり、骨延長(成長障害で短くなったままの骨を正常なレベルまで伸ばす手術)のために適度なテンションをかけたり出来る超スグレモノ!
獣医整形外科の専門医も絶賛する有効なツールですが、じつはこれを採用している動物病院は現時点でかなりの少数派。その理由としては、他の方法に比べて少々お値段が張ること、また獣医師側にマニアックなテクニックが求められることが予想されます。
つくづく整形外科は奥が深いと思う。