食道の病気 その②
以前はほとんど注目されることが無かった食道の病気。最近は内視鏡などの発達で診断率が上がっていますが、バイオプシーが難しい、エコー診断が使えない、多くの場合X線頼み、等の理由から依然として扱いにくい疾患です。
基本的にワンコに多い食道の病気といえば、巨大食道症と逆流性食道炎。逆流性食道炎はワンコに限らず、ここ5年くらいでヒトの臨床でも激増している注目の疾患。
たしか、日経メディカルのリサーチによれば、全国の内科医に対するアンケート「過去3年以内でもっとも多く診断した消化器疾患はなんですか?」に対し、逆流性食道炎は過敏性腸疾患と並んでぶっちぎりの1位・2位を記録していたと思う。
もっとも、ワンコの場合逆流性食道炎の原因はヒトのように生活習慣や肥満に起因することはなく、じつは医原性(=医療が原因をつくる)が多いみたい。
具体的には、手術後の嘔吐による胃液の逆流が指摘されています。一時期、避妊手術に際し、腹腔内の臓器を頭側に移動させて術野を広く確保する理由から、麻酔時に頭をかなり低く保つ体位を推奨していた某国立大学の教授がおりましたが、いまはどうしているのかな~?これって、いまでは危険因子として認識されています。
ただし、この方法はあまり普及していません。やっぱり自分が手術を受ける立場で考えても、他に方法がないのならばともかく、術者の都合だけで頭に血がのぼるような不自然な姿勢は好ましくない、・・・そう大多数の獣医師は感じていたのだと思う。やっぱり獣医師は動物に優しい人種なのだ。