今日は銀次郎がやってきた。
12歳になるワイヤーフォックステリア(♂)ですが、
夜になると咳がひどくなって、徘徊するらしい。
一方、昼は咳もなし。至って健康。

「心雑音があって、頸静脈が怒張してますよ。
呼吸数もかなり増えていますね~。
スリルも触知出来るし、これは心臓性の発咳です。」
こんな話をするとほとんどの飼い主さんは、
「え、!?心臓が悪くなって咳なんてでるんですか?」
「なんで・・・?呼吸器の病気じゃないんですか?」
といった反応を示します。
特に医療関係に従事する人には不思議がられます。
当たり前のことですが、心臓と気管の位置関係は、
四本足歩行のわんこと二本足で歩行する人では
明らかに異なります。
下のシェーマはその関係図です。
心臓は心基部を中心に胸腔内に
ブラブラ、ゴロっとぶら下がっているだけ。
じつにいい加減に存在しています。

わんこに多い弁膜疾患では、一般に
左心房の拡大から始まる気管の挙上が
発咳刺激となります。

B2とDの図で↑で示した部分が左心房です。
もちろんB2よりDのほうが心不全はより重篤。
今回は省きましたが、エックス線検査に合わせて
心エコー検査を実施することで、正確な診断に加えて、
飼い主さんの病気に対する理解がより深まる
と感じています。

というわけで、
咳=呼吸器疾患とは言い切れません。

たんの絡んだようなカラ咳や朝方に出やすい咳には
特に注意が必要です。
不安があれば積極的に調べてもらうといいでしょう。

ただ、一瞬で終わるエックス線撮影と異なり、
心エコー検査は落ち着かないわんこや体調のすぐれない
わんこをなだめつつ、最低でも10分程度かかることが多く、
機器の操作を含めて、獣医師の技量と経験が問われる
検査でもあります。

一瞬で採血したり、一瞬でいい画像を捉えて記録したり、
動物相手の医療行為って、本当に難しい。