2017年1 月〇日(晴)

1月~3月は例年学術講習会や学会の開催が多い。
全国的に病院にゆとりが出る時期に合わせているんです。
今現在私が参加を決めているものだけでも、

1/22(日曜):慢性腎臓病の診断のアップデート 於、新橋
2/12(日曜):脳腫瘍の画像診断関連 於、秋葉原
2/19(日曜):獣医内科学アカデミー 於、パシフィコ横浜
3/12(日曜):獣医麻酔学のアップデート 於、東大

といったところです。最終的にはもうちょっと増えるのかも。

かつて軽井沢が大雪に見舞われて、長野新幹線の運行
見合わせによって、参加できなかったこともありました。
今年は、少なくとも週末は降らないでほしいなあ・・・。

2017年1 月〇日(晴)

今日は銀次郎がやってきた。
12歳になるワイヤーフォックステリア(♂)ですが、
夜になると咳がひどくなって、徘徊するらしい。
一方、昼は咳もなし。至って健康。

「心雑音があって、頸静脈が怒張してますよ。
呼吸数もかなり増えていますね~。
スリルも触知出来るし、これは心臓性の発咳です。」
こんな話をするとほとんどの飼い主さんは、
「え、!?心臓が悪くなって咳なんてでるんですか?」
「なんで・・・?呼吸器の病気じゃないんですか?」
といった反応を示します。
特に医療関係に従事する人には不思議がられます。
当たり前のことですが、心臓と気管の位置関係は、
四本足歩行のわんこと二本足で歩行する人では
明らかに異なります。
下のシェーマはその関係図です。
心臓は心基部を中心に胸腔内に
ブラブラ、ゴロっとぶら下がっているだけ。
じつにいい加減に存在しています。

わんこに多い弁膜疾患では、一般に
左心房の拡大から始まる気管の挙上が
発咳刺激となります。

B2とDの図で↑で示した部分が左心房です。
もちろんB2よりDのほうが心不全はより重篤。
今回は省きましたが、エックス線検査に合わせて
心エコー検査を実施することで、正確な診断に加えて、
飼い主さんの病気に対する理解がより深まる
と感じています。

というわけで、
咳=呼吸器疾患とは言い切れません。

たんの絡んだようなカラ咳や朝方に出やすい咳には
特に注意が必要です。
不安があれば積極的に調べてもらうといいでしょう。

ただ、一瞬で終わるエックス線撮影と異なり、
心エコー検査は落ち着かないわんこや体調のすぐれない
わんこをなだめつつ、最低でも10分程度かかることが多く、
機器の操作を含めて、獣医師の技量と経験が問われる
検査でもあります。

一瞬で採血したり、一瞬でいい画像を捉えて記録したり、
動物相手の医療行為って、本当に難しい。

2017 年 1 月〇日(晴)

明けましておめでとうございます。

ところで、ニューヨークの動物保護施設で、
猫に鳥インフルエンザの感染が広がっているらしい。
この施設に関係する獣医師1名も感染したとか。
ウイルスに変異が生じたのかな~?(=_=)
新年早々、物騒なニュースです。

それにしても、鳥インフルエンザの制圧には
まだまだ時間がかかりそうですね。

2016年12 月〇日(雨)

今日は大量のフードとともに針を飲み込んでしまった
わんこ( ♂、3歳)の開腹手術を行いました。
誤飲事故ですね。

好奇心旺盛な若いわんこは、とりあえず興味のあるものは
なんでも口に入れて遊ぶ習性があります。

今までも消化管内異物として、テニスボール、手袋、
ビーチマットの一部、ミッキーマウス人形の長い足、
焼鳥串、ベルトのバックル部分など色々ありましたが、
今回は裁縫用の針でした。

約20cmの糸のついた状態で摘出、これにはちょっと驚き!

開腹手術を含め、慎重に処置しましたので
大事には至りませんでしたが、
中毒センターの発表したヒトの誤飲事故では、
9か月の小児が小さなプラスチック製のおもちゃを誤飲して
呼吸困難で死亡しています(食道内の異物と思われる)。

皆さん、誤飲には気をつけてください。

2016年12 月〇日(曇)

溶ける石と溶けない石

今日は8歳のマルチーズ(♀)のフルールちゃんがやってきた。
先日の検査で膀胱に結石が4個ほどあることがわかっています。

ところで膀胱結石のわんこ・にゃんこを診る際に、
獣医師が最もこだわる点はその石の組成。

エコー画像やレントゲン画像で形態を確認した上で、
尿のpHを調べ、食事内容を知ることが出来れば
組成(=結石の種類)はほぼ推定可能。

犬と猫の2大膀胱結石は、今も昔も
●ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)と
●シュウ酸カルシウム。
上記2つで膀胱結石症例全体の75%を占めます。

この2つの結石はとても対照的な性格で、
ストラバイトはアルカリ尿で生成されやすく
食事で溶かすことができる結石であり、
外科的な摘出はもちろんのこと、
内科的な治療、すなわち食事による溶解が可能。
一方、シュウ酸Caは酸性~弱酸性尿でできやすく
絶対に溶けない結石の代表選手。
内科療法は一切通用しません。
すなわち治療は外科的摘出のみ。

かつて「結石といえばストラバイト」というほど多く、
フードメーカーがストラバイト対策に走りすぎ、
今ではストラバイト結石は減りましたが、
逆にシュウ酸Caは増えている状況。

というわけでシュウ酸Caはちょっと厄介な石です。
シュウ酸Caは厳密な意味で生体内でどのように形成
されるのか解明されておらず、未解決な部分を含んでいます。

食事に含まれるシュウ酸が体内でカルシウムと結合すると
主張する外因説と、食事とは関係なく体内でシュウ酸が
合成されて、これがカルシウムと結合するという内因説。
いずれが正しいのか、研究者の間でも見解が一致しません。
完璧な予防方法は存在しない、ということになりますね。
謎の多い結石といわれるゆえんです。

ところでフルールちゃんのケースは、シュウ酸Caの可能性が
高いので、今後は外科的な処置が必要かもしれない・・・。

2016年12 月〇日(曇)

今朝は地震で目が覚めました。

ところで地震に縦揺れと横揺れ(P波とS波だっけ?)
があることは広く知られていますが、
眼球にも縦揺れと横揺れがあるのをご存知ですか?

いわゆる「眼球振盪」です。
実は縦揺れと横揺れ以外に軸回転という動きもあり、
揺れ方は合計3種類。

ただし、臨床的には横揺れと回転は同一とみなすので、
実質的には、縦と横の2種類です。

この縦揺れ(垂直方向)と横揺れ(水平方向)、
単に方向が違うだけと思われがちですが、
この方向差は非常に重要な意味を持ちます。

あくまで一般論ですが、
縦揺れ(垂直眼震)は中枢神経系(小脳)を含む異常で
基本的に予後不良の場合が多いんです。
垂直方向の震盪は重篤な疾患の存在を示唆する、
といえます。

一方、横揺れ(水平眼震)は病変が末梢神経系
に限局していることがほとんどで、
意識障害を認めないかぎり、予後は良好。

とはいえ何事にも例外はありますから、素人判断は禁物。

眼球振盪は高齢犬には結構な確率で認められますし、
また特定の種類の猫にはありふれた症状ですが、
認めた場合には、速やかに受診してください。

2016年12 月〇日(晴)

日経新聞の報道によれば、
京都産業大学が獣医学部の設置を
文科省・内閣府に申請したみたい。
以下は関連記事の抜粋。

「京都産業大学で獣医学部を新設する構想が浮上。
動物病院ではなく、ヒト向けの新薬開発や
iPS細胞研究で家畜を扱う先端分野の
獣医師を育成する。

現在獣医学部新設は文科省により抑制されているが、
国家戦略特区の枠組みを使って規制緩和できるように、
京都府は内閣府などに要望した。

実現すれば、京産大は京都府綾部市に研究所を
設立し、府の畜産センターとの連携を図る方針だ。」

特定分野の獣医師が足りないから育成する
という趣旨らしいけど、医師の偏在と同じく、
獣医師も偏在しているからなあ~。

数さえ増えれば、新薬開発やiPS細胞研究に携わる
獣医師が増える、とは思えないけど・・・。
動物病院勤務の先生が増えるだけかも。
日経の報道となれば、情報は確かなのかな?

ところで京産大ってどんな大学か知らなくて
大学にいる友人に聞きました。
友人Aいわく、
「鳥インフルエンザの権威の大槻先生がいるよ」
友人Bいわく、
「つるべの母校」

いずれも正解らしい。

2016年12 月〇日(曇)

獣医学界最大のミステリー?

今日は猫のぶー太郎がやって来た。
ぶー太郎は7歳になるにゃんこで
甲状腺機能亢進症を患っています。

ところで
「猫の甲状腺機能亢進症」という病気、
非常に新しい病気と言われています。
実際1979年に論文報告があって、
その後1980年を境に急増した疾患です。

なぜそんなことが言えるかというと、
過去100年間ぐらいの猫の剖検組織を
くまなく検索して、徹底的に調べなおした
研究者がいるんです(すごい根気!)。

そして、
確かに1979年以前の100年間にはない疾患
であることが、学術的に証明されました。
いまではこれが世界の常識。

私がこの事実を知ったのは、内分泌疾患の
第一人者、M教授(東大)のセミナーでしたが、
当時も今も、その原因は全く不明のまま。

不思議な話ですよね。
1979年、猫の世界に何が起こったの?

たかだか30~40年で猫の身体機能に
遺伝的な変化が生じることは考えにくく、
現状、誰もが環境説を唱えているようです。

環境が原因であるにしても、具体的に水なのか、
フードなのか、土壌なのか、化学物質汚染なのか、
まったく分かっていません。

ちなみに日本での猫の8歳以上の有病率が3%、
欧米(特に米国)での有病率が15%です。
けっこう地域性も大きな疾患なんです。

甲状腺疾患はこれ以外にも不審、不明な点が多く、
知れば知るほど、実にミステリアスな疾患です。

私が生きている間にこの謎は解明されるのでしょうか?

2016年11月〇日(曇)

2週続けて招待セミナーに行ってきました。
先週は明治製菓ファルマの麻酔に関するもの、
そして今日はフジフィルムの神経学に関するもの。
両社とも動物病院業界においてはビッグな存在。

セミナーにはさほど驚くような内容は
含まれていませんでしたが、
帰りの新幹線に乗るべく
東京駅の地下を歩いていたら、
人ごみの中から突然
「よう、きくち!」の呼びかけが…。

振り返ると高校時代の親友(内科医)がいました。
この偶然にはちょっとびっくり。

これだけでも驚きなのに、
なんと帰りの新幹線も同じ。
座席もグリーンの1Dと5Dと近い。
こんな偶然って、あるんですね。

2016年11 月24日(雪)

いきなりの雪です (-_-)。
せっかくの休みも雪かき…。
軽井沢の積雪は21㎝、
今からこれでは、今後どうなるんだろう。
出来れば、雪は少なくあってほしいなあ。

もうそろそろ除雪機を準備しようかな。

元来操縦や操作、運転は大好きなので
クルマ同様、除雪機の操作も好きですが、
寒さがカラダにこたえる、今日この頃です。