2017年3 月〇日(晴)

うちのキャバリア犬、るーちゃんが突然
前庭症候群を発症して倒れてしまいました。
前庭症候群とは、ふらつきや寄りかかり、
旋回運動、斜頸、眼球振とう等を主徴とする
高齢犬に多い神経性疾患。
さらに原因によって、末梢性(=予後良好)と
中枢性(=予後不良)に分けられます。

診たところ、明らかに末梢神経性であり、
中枢神経の関与を疑う所見はありません。

末梢性で一番多いタイプは、外耳炎等の
耳の疾患を除外すれば加齢によるもの(特発性)。
るーちゃんも、もう15歳ですからね。
命に別状なく、末梢性は必ず回復すると
私自身アタマでは解っていても、
愛犬が運動失調に陥っている姿を見るのは
本当に切ない・・・。 (T_T)

がんばれ、るーちゃん!!! !(^^)!

2017年3 月〇日(晴)

タイの動物保護施設でコインを飲み込んで
その重さで泳げなくなった亀の手術があったとか。

飲み込んだコインの数はなんと915枚。
重さにして5kg、明らかに飲みすぎでしょ。

タイでは、幸運を祈ってコインを池に投げ込む
習慣があって、これをこのカメが受け取って
いたらしい。

以下、大学獣医学部の撮影したCT画像

コインの摘出手術は7時間で完了し、
今現在「Omsin」と名付けられて
元気に泳いでいるみたいです。

ちなみに「Omsin」はタイ語で貯金箱
の意だそうです。

2017年3 月〇日(晴)

前回愛犬の遭遇しやすいトラブルについて述べたところ、
猫の飼い主さんからは、「にゃんこははどうなのよ?」
との質問を受けました。
たしかに最近は、にゃんこを連れての軽井沢旅行や
別荘での長期滞在もけっして少なくありません。
愛猫のトラブル、個人的な感覚で言わせてもらえば、
これといった傾向はなく、まんべんなく発生します。

感冒あり、骨折あり、膀胱炎あり、膿胸あり、マダ二あり、
といった感じで何でもありかな。
ただし、猫の場合注意しなければいけないのは腎不全!
高齢猫の40%は腎機能の低下があると言われていて、
いまや高齢化の進む猫界にあっては代表的疾患。

持病として腎臓疾患を患っているようなケースでは、
定期的な補液が必要になることが多く、
一般にこの処置は旅先でも必要になります。

持病のある動物では、軽井沢訪問に限らず、
旅行先で確実に対応してくれる動物病院を
事前に確保しておくべきかと思います。

2017年3 月〇日(晴)

ペット連れで軽井沢に来られた際に
愛犬が遭遇しやすいトラブルを
ご存知ですか?

これはあくまで私の個人的な感想ですが、
上位から順に、

1位=消化器疾患(嘔吐や下痢)、
2位=マダ二の寄生(軽井沢はマダ二が多い!)、
3位=けが、

ですね。

消化器疾患は例を挙げるならば、車に酔って吐いたり、
旅の疲れによる下痢や発熱、といった感じです。

これ、わんこと共に旅行する以上避けることは困難だし、
実際のところ、確実な予防法はありません。

しかし、マダ二の寄生は予防薬で確実に予防可能。
最近は外用薬(スポット)よりも経口薬(おやつ)が人気。
なんたって、わんこに喜ばれつつ予防ができますからね。
今はどこの動物病院でも扱いがあります。

また、ケガの多くがドッグランでの過剰なまでの
運動が原因であることを考えると、
これもある程度は予防可能でしょう。
というわけで、わんこと一緒に軽井沢を旅するなら、
各種予防、とくにマダ二対策は必須です。

そして軽井沢でわんこと良い思い出作りをしてください。

2017年2 月〇日(晴)

NHK(教育)朝の番組0655にはまっています。
わずか5分間の短い番組ですが、その中のコーナーで
日本各地の犬や猫を軽快な音楽にのせて
ノリノリで紹介しています。

たのしいんだよね、これが。
妙にまじめなナレーションも最高!

殺伐としたニュースが多い中、
可愛いわんこやツンデレにゃんこを見ていると
本当に癒されますよ~。

ぜひ早朝から視聴してみてください! !(^^)!
→番組サイトへGO!

2017年1 月〇日(晴)

1月~3月は例年学術講習会や学会の開催が多い。
全国的に病院にゆとりが出る時期に合わせているんです。
今現在私が参加を決めているものだけでも、

1/22(日曜):慢性腎臓病の診断のアップデート 於、新橋
2/12(日曜):脳腫瘍の画像診断関連 於、秋葉原
2/19(日曜):獣医内科学アカデミー 於、パシフィコ横浜
3/12(日曜):獣医麻酔学のアップデート 於、東大

といったところです。最終的にはもうちょっと増えるのかも。

かつて軽井沢が大雪に見舞われて、長野新幹線の運行
見合わせによって、参加できなかったこともありました。
今年は、少なくとも週末は降らないでほしいなあ・・・。

2017年1 月〇日(晴)

今日は銀次郎がやってきた。
12歳になるワイヤーフォックステリア(♂)ですが、
夜になると咳がひどくなって、徘徊するらしい。
一方、昼は咳もなし。至って健康。

「心雑音があって、頸静脈が怒張してますよ。
呼吸数もかなり増えていますね~。
スリルも触知出来るし、これは心臓性の発咳です。」
こんな話をするとほとんどの飼い主さんは、
「え、!?心臓が悪くなって咳なんてでるんですか?」
「なんで・・・?呼吸器の病気じゃないんですか?」
といった反応を示します。
特に医療関係に従事する人には不思議がられます。
当たり前のことですが、心臓と気管の位置関係は、
四本足歩行のわんこと二本足で歩行する人では
明らかに異なります。
下のシェーマはその関係図です。
心臓は心基部を中心に胸腔内に
ブラブラ、ゴロっとぶら下がっているだけ。
じつにいい加減に存在しています。

わんこに多い弁膜疾患では、一般に
左心房の拡大から始まる気管の挙上が
発咳刺激となります。

B2とDの図で↑で示した部分が左心房です。
もちろんB2よりDのほうが心不全はより重篤。
今回は省きましたが、エックス線検査に合わせて
心エコー検査を実施することで、正確な診断に加えて、
飼い主さんの病気に対する理解がより深まる
と感じています。

というわけで、
咳=呼吸器疾患とは言い切れません。

たんの絡んだようなカラ咳や朝方に出やすい咳には
特に注意が必要です。
不安があれば積極的に調べてもらうといいでしょう。

ただ、一瞬で終わるエックス線撮影と異なり、
心エコー検査は落ち着かないわんこや体調のすぐれない
わんこをなだめつつ、最低でも10分程度かかることが多く、
機器の操作を含めて、獣医師の技量と経験が問われる
検査でもあります。

一瞬で採血したり、一瞬でいい画像を捉えて記録したり、
動物相手の医療行為って、本当に難しい。

2017 年 1 月〇日(晴)

明けましておめでとうございます。

ところで、ニューヨークの動物保護施設で、
猫に鳥インフルエンザの感染が広がっているらしい。
この施設に関係する獣医師1名も感染したとか。
ウイルスに変異が生じたのかな~?(=_=)
新年早々、物騒なニュースです。

それにしても、鳥インフルエンザの制圧には
まだまだ時間がかかりそうですね。

2016年12 月〇日(雨)

今日は大量のフードとともに針を飲み込んでしまった
わんこ( ♂、3歳)の開腹手術を行いました。
誤飲事故ですね。

好奇心旺盛な若いわんこは、とりあえず興味のあるものは
なんでも口に入れて遊ぶ習性があります。

今までも消化管内異物として、テニスボール、手袋、
ビーチマットの一部、ミッキーマウス人形の長い足、
焼鳥串、ベルトのバックル部分など色々ありましたが、
今回は裁縫用の針でした。

約20cmの糸のついた状態で摘出、これにはちょっと驚き!

開腹手術を含め、慎重に処置しましたので
大事には至りませんでしたが、
中毒センターの発表したヒトの誤飲事故では、
9か月の小児が小さなプラスチック製のおもちゃを誤飲して
呼吸困難で死亡しています(食道内の異物と思われる)。

皆さん、誤飲には気をつけてください。

2016年12 月〇日(曇)

溶ける石と溶けない石

今日は8歳のマルチーズ(♀)のフルールちゃんがやってきた。
先日の検査で膀胱に結石が4個ほどあることがわかっています。

ところで膀胱結石のわんこ・にゃんこを診る際に、
獣医師が最もこだわる点はその石の組成。

エコー画像やレントゲン画像で形態を確認した上で、
尿のpHを調べ、食事内容を知ることが出来れば
組成(=結石の種類)はほぼ推定可能。

犬と猫の2大膀胱結石は、今も昔も
●ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)と
●シュウ酸カルシウム。
上記2つで膀胱結石症例全体の75%を占めます。

この2つの結石はとても対照的な性格で、
ストラバイトはアルカリ尿で生成されやすく
食事で溶かすことができる結石であり、
外科的な摘出はもちろんのこと、
内科的な治療、すなわち食事による溶解が可能。
一方、シュウ酸Caは酸性~弱酸性尿でできやすく
絶対に溶けない結石の代表選手。
内科療法は一切通用しません。
すなわち治療は外科的摘出のみ。

かつて「結石といえばストラバイト」というほど多く、
フードメーカーがストラバイト対策に走りすぎ、
今ではストラバイト結石は減りましたが、
逆にシュウ酸Caは増えている状況。

というわけでシュウ酸Caはちょっと厄介な石です。
シュウ酸Caは厳密な意味で生体内でどのように形成
されるのか解明されておらず、未解決な部分を含んでいます。

食事に含まれるシュウ酸が体内でカルシウムと結合すると
主張する外因説と、食事とは関係なく体内でシュウ酸が
合成されて、これがカルシウムと結合するという内因説。
いずれが正しいのか、研究者の間でも見解が一致しません。
完璧な予防方法は存在しない、ということになりますね。
謎の多い結石といわれるゆえんです。

ところでフルールちゃんのケースは、シュウ酸Caの可能性が
高いので、今後は外科的な処置が必要かもしれない・・・。