5月  ×日(晴)          

マスコミ報道によれば、先頃米国主導で行われた「オサマビンラディン殺害作戦」には、特殊部隊の隊員とともに、複数のエリート軍用犬が参加していたらしい。

秘密保持の立場から犬種や頭数などは一切発表されていませんが、任務の一部は爆発物の探知であったといわれていますが、これなら空港の検疫犬でもできること。エリート軍用犬を名乗るからには、何かほかに軍事的な特色があるんでしょう。

ところで史上初めて「軍用犬」を本格的に取り入れたのは、世界大戦時のドイツ軍です。米国もこの流れをくんでいるのでしょうか。

当時の軍用犬といえば、ジャーマン・シェパード。
ただ、その任務は悲惨そのもの。爆弾を背負わされたシェパードが敵の戦車の下にもぐりこみ、その接触で起爆装置が作動するというまさに自爆攻撃。
この話は子供向けの本にもなっていて、私も子供の頃、涙を流して読んだ記憶があります。

今回秘密のベールに包まれている米軍の軍用犬ですが、米軍の公表するところでは、被害は一切なかったとのこと。
米軍の殺害作戦はどうかと思うけど、唯一軍用犬に害が及ばかった点はよかったと思う。

5月  ×日(晴)          

最近ユッケやだんごによる食中毒が騒がれています。
おそらくほとんどの人は知らないと思いますが、じつは獣医師は食品衛生や食中毒の専門家でもあります。

食肉処理場で解体された家畜の病気を発見したり、また病気ならばどこまで切除すべきか(=どこまで削れば食べられるのか)、あるいは内臓も含めて全て廃棄すべき状況なのか、包括的な判断はすべて検査責任者である獣医師の判断に任せられています。

現状を把握しているだけに、大学時代は病理や公衆衛生の先生方には「獣医師たるもの、レバー刺しなんて絶対食べてはいけません!」、としつこく言われました。レバーが刺身で食べられるほどの衛生環境で処理されてはいないことを先生方は熟知していたんですね。
レバーほどでなくとも、ユッケも衛生的な扱いがなされていなかったということでしょう。

ところで今回の事件とは直接関係ありませんが、レアで心おききなく牛肉が食べられるのは、おそらく日本を含む限られた国のみ。海外の牛肉には日本には存在しない特別な条虫2種が寄生していることが多く、レアでは危険です。

おいしいステーキ、国内ではレアでも海外ではウェルダンで頂きましょう。

5月  ×日(曇)          

最近はワンコやニャンコに限らず、うさぎもかなり長寿になってきました。数年前までは、7歳以上といえば「長生きですね!」と言う会話が成り立っていましたが、今日では10歳以上が珍しくありません。

うさぎには定期的なワクチン接種こそありませんが、以前にも増して大切に飼われるうえに、今は不安があれば早い段階で病院を受診することが習慣化したこと、これこそが長寿の一番の理由だと思います。

ちなみに、うさぎの生物学的な寿命はおそらく5~6歳です。

ところで長寿化すると増える病気といえば、ガン。
ヒトに限らず、どんな動物でも高齢化するとガンが増えるんです。

最近はウサギの腫瘍切除手術もかなり多くなりました。ただ、ウサギの手術は手術以前の鎮静化や麻酔導入がとても難しいんです。

なぜならウサギは生物学的に非常にストレスに弱くできており、容易に心停止をきたす動物なんです。不用意に保定したり、つよく抱っこしただけで死ぬ可能性があります。

元々の意義は、もしも野生の状態で肉食動物等に捕食されたら、急激な心停止により必要以上に苦しまなくてもすむため、と言われています。

この1点をみてもウサギの本格的な診療の難しさが想像できると思いますが、それにしても、自然の知恵ってすごいと思う。

3月  ×日(曇)          

福島の原発事故に終息の気配がなく、むしろ飲水制限から混乱は広がるばかりです。

都内の動物病院では、「水道水を愛犬に飲ませても大丈夫?」という電話相談が殺到しているとか。
長野県内では放射性物質による水の汚染はありませんが、当院でも軽井沢の別荘と都内を往復している方々からは、同様の質問を受けることが増えました。

この疑問に対しては、私も正直言って大丈夫か否か、本当のところはわかりません。少なくとも今の段階で、放射性物質(とくにヨウ素131、ヨウ素134)摂取による内部被爆と愛玩動物との関連性についての調査報告はありませんから。
むしろ私のほうが聞きたいくらいです。

ただ、ヒトについては疫学調査などをふまえて政府は「現段階で水道水は安全」とか「ヨウ素131を含む牛乳を1年間摂取し続けてもCT1回分の被爆線量で安全」と言っています。

でも、これっておかしな論理です。
CTなどによる医療被曝は健康へのメリットが被爆による不利益を上回るから規制から例外的に除外されるのであって、必ずしも医療被曝=安全というわけではありません。

生体に対しては、被爆はないほうが好ましいにきまっています。
また、CTは基本的に外部被爆ですが、現在問題となっているヨウ素131、ヨウ素134は、いくら半減期が短いとはいえ内部被爆です。
この点については、チェルノブイリの医療支援の経験を踏まえて、阪大教授の野村氏が新聞紙上で政府対応に疑問を呈しています。

最近は動物でもCTによる画像診断が二次医療機関では当たり前になってきましたが、通常のX線検査より格段に被爆線量が多くなるので、取り扱いに際しては、よりいっそうの慎重さが求められます。

ここで国際放射線防護委員会(ICRP)によるCT取り扱いに関する注意喚起を記載します。

「胸部CTの実効線量は8mSvでこれは胸部X線撮影の400回分に相当する。そして骨盤部等のCT検査では20mSvにもなる。CT検査における組織吸収線量は、疫学調査でがんの発生率が増加するとされたレベルに近いかそれ以上になることもありうる。」

原子力発電所のトラブルが一刻も早く終息することを切に願う。

3月  ×日(曇)          

東電の計画停電がとても不評とか。

とりあえず、長野県は中部電力のエリアなので停電こそありませんが、今回は電気の大切さを思い知らされました。

東電とは直接関係ないけど、当院でも看板のライトアップの点灯時間を短縮したり、こまめに診察室の電気を切ったりして、スタッフ一同なるべく節電に努めています。

考えてみれば、私たちが動物病院で使用する機器は、内臓バッテリーで駆動できるものもありますが、基本的にAC電源のみで働く機器が非常に多い。

当院でも手術中に長時間の停電にみまわれたとなれば、非常用電源に切り替えたとしても生体モニターから無影灯、人工呼吸器、レーザー、電気メス、シーリングシステムなどでかなりの電気量を食ってしまいますから、最後は時間との戦いになると思う。
今回の震災では、私自身いろいろなことを考えさせられました。
これを機に、私たち日本人の意識や生き方も、きっと大きく変るんじゃないか・・・と思う。

3月  ×日(雪)          

福島の原子力発電所事故以来、福島県から長野県内に避難する人がとても増えているみたいです。
実際、ここ軽井沢でも福島県内から避難された方のワンコを診る機会が結構増えました。

昨日も当院を受診された飼い主さんで、急な避難でドックフードの持ち合わせがなくて困っている方に病院のストックフードを無償で提供したところ、大変喜ばれました (^_^)。わずかでもお役に立てて嬉しい。

ところで放射線に関しましては、私たち獣医師もレントゲン機器を扱うので、医師や放射線技師同様、職業上「被爆管理」が義務付けられています。

通常行われている放射線(X線、γ線)の監視方法は、クイクセルバッジ(フイルムバッジ)といわれるもので、仕事中は胸ポケットに付けたり、またエックス線透視をする先生は、指にも装着しています(指輪タイプ)。

これ、私も胸に着用しています。
ポケット線量計のようなリアルタイムでの線量計測はできませんが、過去1ヵ月の総被爆線量を事後報告で知ることができます。

医療従事者に関しては、一応1ヵ月あたり0.1mSv(=100μSv)以下が基準ですが、これを単純に30日で割ると3.3μSv/day、1時間あたりでは0.138μSv/hourとなります。

さて来月4月の線量報告書(=3月の測定結果)は、はたしてどんな結果になるのか、少なからず原発の影響が測定結果に反映されるのか、原発から250km離れている長野県に住んでいながらも、大いに気になるところです。

3月  12日(晴)          

このたびの大規模地震により
被害を受けられた皆様に
心よりお見舞い申し上げるとともに、
皆様の安全と一日も早い復旧を
お祈り申し上げます。

私どもはやや強い揺れこそ感じましたが、
実害はほとんどありませんでした。
ただ、過去に浅間山の噴火等も経験しており、
今回の災害も、とても他人事とは思えません。

これ以上の災害に見舞われることがないように
祈るばかりです。

なお、被災されました方につきましては、今春の
狂犬病予防注射接種料金は無料となりました。
詳しくは当院までお問い合わせください。

 3月  ×日(雪 )          

医師を選ぶも寿命のうち・・・?

今日はマルチーズのピーチちゃん(14才・♀)がやってきた。
飼い主さんいわく、「最近いよいよおしっこの出方が悪く、とうとう昨夜からは好きなドックフードも食べなくなってしまった」とのこと。
困りましたね、これは。言い知れぬ不安がアタマをよぎりました。

早速診察するも、ピーチちゃん、診察台の上でも見るからに体調が悪そうな様子。

聞けば、自宅近所(=とはいっても、隣町になりますが)のA動物病院を以前受診してエコー検査を受けた際、「膀胱結石による膀胱炎」を指摘されて、今日まで治療してきたものの、一向に症状が改善せず、さすがに心配になって病院を変えて当院に来たらしい。

飼い主さん自身が「膀胱結石による膀胱炎」の診断を疑っている様子はありませんが、再確認のため当院でもエコー検査を実施したところ、なんと結石ではなく(=結石はまったく見当たらない!)、明らかな腫瘍性病変が確認されました。

膀胱頚に浸潤したその様子から、まず移行上皮ガンは間違いないと思われますが(=現在病理の結果待ち)、エコーで診るかぎり、移行上皮ガンの末期的ともいえる深刻な状況に唖然としました。

本当に参りましたね・・・、これは。
A動物病院を信じて通院してていたのに、エコー検査まで受けながら、ガンを結石と見誤られ今や手遅れ、治療の極めて困難な状態。
もちろん同業者について批判的なことは言いたくありませんが、この状況は正確に言わざるを得ないだろうと思い、正直に現状を説明しました。

すべてを話した後の、飼い主さんの悲しそうな顔が瞼に焼き付いて、今も忘れられない・・・。
もし私が逆の立場だったら、間違いなく号泣したと思う。(T_T)
ああ、こうなる前に診てあげたかった。
こうなった以上、私にできることはなんでもしてあげようと思う。

 3月  ×日(雪 )          

IT時代の聴診器

久しぶりに聴診器を購入しました。
今まで状況や病態に応じて使い分けていた聴診器3本のうち1本の調子が悪くなってしまい、買い換えた次第です。

聴診器は言うまでもなく「音を聴く道具」なので本来慎重に扱われるべき医療器具ですが、時には暴れる動物も相手にしますから、やっぱりダイヤフラム(=聴診する面)が傷むことも多いので、獣医師にとっては消耗品の感覚です。

最近の聴診器はIT技術の進歩で、実際の音を18倍まで増幅したり、意図的にノイズを消したり、短時間ながら一部を録音・再生したり、あるいはパソコンに赤外線通信で情報を飛ばして専用ソフトで音質分析できるものがあります(上記画像)。

電池を内蔵しているので一般的な聴診器と比べやや重く、チューブが短いものの、雑音等聞き逃しが少ない点・音質を変えられる点・リアルタイムで心拍数を確認できる点を重視して、今回大枚をはたいて購入しました。

テレビ放送だけじゃなく、聴診の世界もいまやアナログからデジタルの時代に突入しているのだ。

2月  ×日(雪 )          

今年は例年より雪が少ないな~、と思っていたらここにきて2日連日の大雪。もっとも、都内含め全国的に雪に見舞われているというから、今回降って当然かもしれない。

除雪車があるので除雪作業はさほど気にならないけど、それでも結構なチカラ仕事には違いないので、手術の予定がある日は私は除雪作業を控えています。

自分のことをけっして神経質な性格ではないと思っていますが、朝から除雪機を動かしたり重い荷物を運んだりすると、手術時必ず指先の感覚に違和感を覚えるタチなので、手術前には雪かきはしません。

でもよくできたもので、こういうときは妻やスタッフがそれなりに雪かきをしてくれるのでとても助かります。

その一方で、手術が予定よりも早く終了したような時(=スムースに終わる手術はまず成功間違いなし!)は、ルンルン気分で除雪作業に取り組んでいます。

なぜなら除雪作業は私の場合ダイエット効果抜群なんです。作業の前後で体重1kg減なんて当たり前!単純な比較は難しいけど、おそらくロードバイクと同等、もしくはそれ以上のダイエット効果があるんじゃないか、と思っています。