4月 ×日(晴 )
みなさん、進行性網膜萎縮(P.R.A)という病気をご存知ですか?これは徐々に進行してワンコの視力を蝕む怖い病気。今までは一部のM.ダックスフントとラブラドールに好発するといわれていましたが、最近立て続けに他の犬種でこの疾患を見ました。
かつて北海道の某盲導犬育成センターの仔犬に多発して以降、、盲導犬育成機関では盲導犬を選抜する際の必須検査項目に眼底の検査を入れています。当初訓練を終えた盲導犬がいよいよ実社会にデビューする段階になって視力障害を生じ、大きな社会問題になった事がありました。
なんとなく視力が衰えたようだ、物によくぶつかる、散歩を嫌がる、といった傾向を認める場合は、病院での検査をおすすめします。P.R.A.は原因不明の疾患だけに予後は予断を許しませんが、中には治療に反応するワンコもいますので、早期診断は意義があります。
なお、確定診断には眼底検査が必要です。必ずしも全ての動物病院に眼底を観察する倒像鏡や眼底カメラがあるわけではありませんから、事前に病院にお確かめの上受診されると良いと思います。
4月 ×日(晴 )
先週に引き続き、本日も東大の動物医療センター(外科)に紹介状を書きました。私が東大病院を紹介するケースで多いのは、悪性腫瘍、頭頚部の神経疾患、そして自己免疫性疾患。
ここ数年で飼い主さんの病気に対する意識がかなりかわってきた気がします。以前よりも、「たとえ治らない病気であっても、出来るだけの事はしてあげたい」、「その病気をよく知ったうえで、飼い主として何ができるのか自分なりに考えたい」、といった治療に際し明確な意思を持つ人が確実に増えています。
こうなると飼い主さんのご要望に応えるべく、大学に紹介する症例も必然的に増えて、そのせいで東大も診療が超過密化、ここ2年くらいは、懇意の先生がいるとはいえ、なかなか予約fが取りにくくなりました。とはいえ私が自信をもって紹介できる2次診療機関は現状ではここだけなので、今の診療体制からあと週1日だけでも診療日を増やしてもらえるとありがたいと思う今日この頃です。
3月 ×日(曇 )
きょうはトイプードルのペーター(♂、1才4ケ月齢)がやってきた。飼い主さんいわく、「数ヶ月前から歩き方がヘンだったけど、様子をみてきた」とのこと。診察台で後肢をみると、なんと典型的なエックス脚(=つま先の外転)です。案の定、触診では膝蓋骨(=ひざの関節の皿状の骨)の外側への恒久的な脱臼が確認されました。
一般に小型犬では膝蓋骨は内側に脱臼することが多く(90%)、外側への脱臼はまれ(10%)。ただ、内側への脱臼であろうが、外側への脱臼であろうが、放置しておくと膝だけの問題では済まず、まず間違いなく肢全体に力学的な歪み(=肢の変形、すなわちアライアメントの異常)を生じます。ほんとうは異常に気付いた早い段階で手術による矯正がベストなんですが・・・。
ここまできた以上獣医師としてベストを尽くすのみ。ペーター君、必ず治してあげよう!
3月 ×日(曇 )
しばらく休止しておりましたサイバー診察室を復活致しました。復活の理由はいくつかありますが、一番の理由は治療方法の進歩。ここ2年くらいで老齢性疾患の代表である心不全や関節炎、腎不全などは新たな見解や新薬が見出され、病気によっては従来の治療方法が必ずしも最新・最良の処置とはいえなくなりました。
その一方で、飼い主さんがそのような最新情報に接する機会は極めて限られており、またネット上に氾濫する情報も獣医師の目で眺めてみると、現状では玉石混交といったところでしょうか。
もちろんメールでの相談は限られた情報だけであり、実際に診察してみないことには判断できない事も多く、はたしてどれだけ飼い主さんのお役に立てるかわかりませんが、愛する動物の治療をすすめて行く上で、「サイバー診察室」がわずかでも参考になれば幸いです。
2月 ×日(雪 )
今日はお昼休みを使って往診に行きました。普段は診療を終えてから出かけることにしていますが、雪の季節で、しかも夜間の往診は路面が凍結してかなり怖いので、特別な事情がない限り昼に往診です。
本当なら往診先の道路事情を考慮して4駆でいけばよかったのですが、うちの周辺ではほとんどの雪が溶けてなくなっていたので、とりあえずスタッフを乗せてFR車で出発進行!雪道対策として新品のスタッドレスを履いているので至って順調。というか、ここまでは順調でした。
往診先での仕事を無事に終え、クルマに戻ってみると、あれっ、雪が結構積もっている。しかも別荘地ですから、駐車場にはゆるい傾斜があります。う~ん、なんだかいやな予感・・・。案の定クルマを動かそうとしたら後輪がスタックしてしまい、どうにも発進出来ない状況。ミシュランの真新しいスタッドレスタイヤを4本履いていても、FR車で路面が完全に凍結したら、まったく歯が立たないんですね~。仕方がないのでJAFに連絡して事なきを得ましたが、やっぱり雪道はヘビーな4駆に限ります。以後雪の往診は4駆のみにしようと思う。
2月 ×日(雪 )
地方紙(=信濃毎日新聞朝刊)の一面に、長野県出身者が宇宙飛行士候補に選ばれたとのニュースが掲載されていました。ほう、宇宙へ行けるんだ、いいなあ~、ボクもいきたいなあ~、と思いつつ記事を読み進めると、どうやらこの宇宙飛行士候補はワタシの出身高校の2~3年後輩みたい。
一応進学校だったけどなにせ田舎の高校だから、宇宙飛行士になる人はおそらく彼が最初で最後かもしれない。そもそも宇宙飛行士は開校以来初だろう。快挙ですね。記事によれば子供の頃から星座や天体に興味があり、宇宙への夢を描いていたとのこと。う~ん、初志貫徹か。すごいなあ。
ちなみにワタシのなりたかった夢は、タンクローリーの運転手(幼児期)→パイロット(小学生)→川口探検隊への入隊(中学生)→映画俳優もしくは獣医師(高校生)、といったところでしょうか。初志貫徹にはほど遠い状況ですが、動物好きなワタシはやっぱり獣医師でよかったと思う。でももし生まれ変わることがあったら、ぜひ、ぜひ、映画俳優に挑戦したい!
2月 ×日(晴 )
獣医師会の会議があったので、久しぶりに佐久市まで行ってきました。軽井沢からはクルマで40分くらいかかるので、診療のある日にあったりすると結構大変。
今日も診療の合間をぬって会議に出席しましたが、遅刻する先生がいるわ、なぜか開催時刻は遅れるわ、開催挨拶が要領を得ないわでてんやわんや。診療の合間に出席する先生が大半を占める会議は、より重要な議題に重点的に時間を割り当てて、その他の確認事項などは各自が資料に目を通すだけで十分なはず。まずまず気長な私ですが、時間を大切にしない人は嫌いです。(>_<)
2月 ×日(晴 )
ニュースを見ながら遅いお昼を摂っていたら、中川大臣の辞任の速報が流れていました。どうやら酩酊会見が辞任の原因のようです。本人は倍量飲んだとする風邪薬のせいにしていますが、たぶん一般的な風邪薬のたぐいであれば倍量程度で呂律が回らなくなることはありません。そもそも薬が厚労省から認可されるには非常に厳しい基準があって、臨床で使用される前の動物実験や毒性試験等で通常5倍、10倍投与群でも臨床上なんら異常を認めないくらいの高い安全性が保証されない限り、認可されません。これって薬理学の常識。
立場上お酒を飲んでいたとは言えないのでしょうが、かなりストレスの多い仕事である事を考えると、大臣ちょっとかわいそう・・・。(>_<)
ところで、医師や獣医師は、たとえお酒を飲んでいても診察が可能な場合があります。たとえば、自宅で夜晩酌中に急患が運び込まれたような場合。もちろん診療時間内(=仕事中)であれば、飲酒なんてもってのほか(!)ですが、時間外の急病や急患など緊急性の高い場合、お酒が抜けるまで待っていたら救える命も救えなくなってしまいます。
ちなみに私はお酒を飲んだ状態で診察したことは一度もありません。理由は簡単、私はほとんどお酒が飲めない体質なのだ。^_^;
2月 ×日(曇 )
科学の進歩はめざましく、TV報道によれば先日噴火した浅間山の内部構造がかなり克明にわかるらしい。なんでも、宇宙から飛来するミューオンという宇宙線は基本的に人を含め全ての物質を通過してしまうが、非常に密度の高い物質(=マグマ)だけは通過できず、これを測定する事で内部構造が描けるということらしい。あれ、これってどこかで聞いた話?ああ、レントゲンと全く同じ原理じゃないか!
今のところ二次元の画像しか発表されていないけど、近い将来三次元の3D画像も見れるようになるのかな?スケールの大きな話だけに今後が楽しみです。
2月 ×日(晴 )
米国HESKA社製の犬猫用尿比重計が届きました。いままで国内には人体用の尿比重計(=国産)しか存在しなかったので、当然のことながら人体用を犬猫に転用していましたが、このたび所属する獣医師グループを介して米国からの輸入に成功しました!\(~o~)/
まだ国内には30本くらいしか輸入されていない注目の逸品。しかも温度補正を内部で自動で行なう為、補正操作が不要。おもわず分解してみたくなる衝動に駆られましたが、壊してしまうと悲しいのでその気持ちをグっと抑えました。
検査の精度が上がることには大きな意義がありますが、ツールマニアの私としては、所有すること自体にも大きな喜びを感じています。