1月 ×日(曇)          

<毒のお話 その①>

夜遅い時間に急患で日本猫のミー太(6歳)がやってきた。飼い主さん曰く、「夜10時過ぎに帰宅したらミー太がヨダレをたらしてコタツのわきでひっくり返っていた!」とのこと。来院時すでに神経症状(眼球しんとう等)を呈してしていたので中毒を疑ってお話を伺ったところ、観賞用の植物(折鶴ラン)の葉っぱが部屋中に散らばっていて、どうやらこれを食べたらしい。

かつて都内の動物病院に勤務していた頃、これと全く同じ症例-“折鶴ランの摂取による中毒”-を2度ほど経験した事がありますが、ふしぎなことに毒性学や中毒学のテキストをみても折鶴ラン単独では記載がありません。もっとも、”ランの仲間にはアルカロイド(植物に含まれるアルカリ性の薬理活性物質)を含むものもあるので留意せよ”、との注意書きはありますが・・・。ちなみに最も有名なアルカロイドといえば、コカインやモルヒネといったところでしょうか。

ところでその後ミー太は難なく回復して無事退院出来ましたが、猫はなぜかツンツンした葉っぱを食べる習性があるので、とくに猫を飼われている方はご注意あそばせ!!

1月 ×日(雪)          

私が毎年正月に必ず読み返す本があります。その名は「聖の青春」。将棋界の最高峰A級に在籍しながら、病のため名人位まで達することが出来ずに亡くなられた不遇の棋士(村山聖9段、享年29)の話です。言葉にすると月並みな表現にしかなりませんが、命の大切さ、命の重さ、運命への慟哭、人生のはかなさ等をしみじみと感じさせてくれる一冊です。
数年前にマスコミにも取り上げられてご存知の方も多いと思いますが、この本には何回読み返しても心に響くものがあります。年間の自殺者が3万人超という現代においてこそ多くの方に読んでいただきたい、なんて思うのは私のお節介でしょうか。

2008年 1月 ×日(曇)          

都内に行ったので、赤坂御所隣の豊川稲荷にお参りしてきました。年初は私用でいそがしく今まで初詣の機会を逸してしまいましたので、1月中旬にもなってしまいましたが、これが今年の初詣。
今まで初詣といえば神社やお寺がほとんどでお稲荷さんははじめてですが、密教の影響を受けているのかいろいろな神様をところ狭しとばかりおまつりしていて非常に興味深いところでした。
なかでも「融通金」をいただける神様がまつられていてびっくり!これは神様がお参りした人に授けるもので、従来のお賽銭を納めるだけの習慣とは異なるユニークな発想で、「融通金」をいただいたら翌年は返礼金としてお返しするしきたりとか。
ちなみにこの「融通金」つねにお財布に入れておくべしとの但し書きがあります。う~ん、さすがお稲荷さん!

ところで意外と若い子の参拝が多いのは、歌の神様も祭られているかららしい。最近はジャニーズ事務所所属の歌手がこぞってお参りするみたい。そういえば芸能人の記念樹が境内にいくつもありましたね。
一方、この近所の年配の方々は事前に油揚げとおもちを用意して熱心にお参りしていました。都会の近代的なビルに囲まれているにもかかわらず、このエリアには神様が宿っているんだなあ~、と実感!

12月 23日(雪)          

今年は雪が少ないな~、つまんないな~、なんてノンキに構えていたら、いきなり雪が積もってしまった。今朝までには降り止んでいましたがそれでも昨夜から降り積もった雪は15cmくらい。これは中途半端な降雪量なのだ。しかも春の雪のように湿って重そう。空を眺めて一瞬カラダを使って雪かきをするか、あるいは車庫の除雪車を使うか迷ってしまうが、ええい、ダイエット中なのでカラダをはって雪かきしよう!
朝7時半から約1時間かけてクライアント用駐車場を除雪、その後は出勤してきたスタッフとともに約20分でスタッフ用駐車場も除雪しました。早朝から汗を流すのは気持ちいいのだ。

12月 ×日(曇)          

開業してまる4年、ウェイティングサロンの椅子がだいぶくたびれてきたので本日全て入れ替えました。今回選んだイスは、今まで使用していたものと比べ斬新なデザインであるがゆえに一見座りにくそうにみえますが、実際に腰掛けてみると非常に座り心地がよく、カラダ全体が癒される感じなのだ。

聞くところによると、このイスは有名デザイナーの設計による、そのスジでは超有名な逸品らしい。機能性とこだわりのデザインをみごとに統合するとは、さすがいい仕事してますね。

みなさん、来院のおりにはこのイスでくつろいでください。

11月 ×日(晴)          

獣医師という職業柄、全ての動物の全ての生理機能について詳しいと思われているようで、先日もいきなり「タカやワシなどの千里眼ってどの位の視力なんですか?」と訊かれました。今までは「私はワシやタカの視力検査はしたことがないので正確なところはわかりません」と答えていましたが、いろいろ調べてみると異論はあるものの猛禽類の視力は一応7.0~8.0くらいらしい。ちなみに私の視力は裸眼で左右共に0.7、眼鏡で矯正して1.5です。

ところで先般日本が打ち上げた軍事偵察衛星は視力に換算すると140くらいに相当するそうです。またグーグルマップで使用している商業衛生もこれと同等もしくは少し上とか。目安としては地上1mのものが判別出来るレベルです。

さすが”機械の眼”はすごいな~と感心していたら、米国の軍事偵察衛星は視力換算で720~740はあるという。ここまでいくと地上10cmの物体を明確に認識できるそうです。北朝鮮の行動が米国に筒抜けなのもうなづける・・・。

なお、妻の知人に裸眼で視力3.0という偉人がおり、特技はかなり離れた場所からもタクシーの存在を認識して、誰よりも早くタクシーをキャッチ出来ることとか。

10月 26日(曇)          

今日は吸入麻酔の誕生日。今から160年ほど昔の1846年10月26日、人類史上初の吸入麻酔薬による手術がマサチューセッツ総合病院にて行なわれました。このときの麻酔担当医は有能な歯科医にして有名な詐欺師とうたわれたDr.モートン。これ以降人類は手術時の無用な痛みから解放されたわけですが、それ以前の手術は無麻酔で患者を押さえつけてやっていたとか。怖い話しですね。手術の痛みに耐える自信がなくて、手術を前に自殺に走る人も多かったようです。吸入麻酔の発明は人類にとって、動物にとってまさに福音。

ところで当時の吸入麻酔薬といば気化したエチルエーテル。あの吐き気のする不快臭、どう考えてもカラダにいいとは思えない・・・。でも当時の最先端がエチルエーテル。もっともこれ以前に笑気を試みた人もいたようですが(1800年頃)、医学とは関係なくトリップ目的でいかがわしい人種がワインパーティーなどで乱用していたとか。

ちなみに現在の吸入麻酔薬の主役はヒトではセボフルレン、獣医科領域ではイソフルレン(=フォーレン、国内)もしくはデスフルラン(海外、国内未発売)であり、当然エーテルは用いられていません。でも笑気は現在でも重宝されています。吸入麻酔の歴史は160年そこそこですが、人類と笑気の付き合いは200年になるそうです。

10月 ×日(曇)          

米国が世界トップレベルの獣医療を擁する国である事は広く知られていますが、そのお隣カナダもかなりの獣医療先進国らしい。MRIやエックス線CTを日常的な診療に加えている動物病院もかなり多いとのこと。

その一方で、人間の方は基本的に医療費は無料のため(2つの州を除く)多くの患者さんが医療機関に殺到し、肝心の人でMRIやCTを用いた診断が3ヵ月待ちは当たり前とか。驚くべきことに、動物のほうがはるかにスムースに診断が進むという異常事態。

ところでこのような状況下では、カナダ在住のVIPは自国の医療機関を頼りにせず、お隣の米国に行ってしまうことが常態化しており、その行き先は世界屈指の超有名クリニック、メイヨークリニックに集中するんだそうです。そういえば、メイヨーの名を冠した外科器具がいくつかありますが、ここが発端なのだ。

ここメイヨークリニックは私立にもかかわらず生体肝移植の手術症例数世界一を誇る移植医療・再生医療のメッカであり、アラブの王族をはじめとする世界中からの超VIPを受け入れるための病院です。エントランスはかなり広く複数のリムジンが同時に乗り入れられる構造で、ドアマンも常駐、院内にマリオット・ホテルを併設するという豪華ぶり。病室にはコンシェルジュがつくんだそうです。すごい世界があったものです。

10月 ×日(曇)          

当世動物病院事情③

最近ようやく獣医療界でも認知されつつあるセカンドオピニオン。納得のいく治療なり方法なりを求めて、あるいは飼い主さん自身がその病気に対する理解を深め今後の参考とする意味では、大変いいことだと思っています。ただ、悲しいことに、一部にはその意義を十分理解しないままに、次々と病院を渡り歩く飼い主さんがいます。これではドクターショッピングとなんらかわりがありません。信頼できるドクターを中心によりよい治療の可能性を探る、これが基本ですね。

9月 ×日(霧)          

当世動物病院事情②

私が”開業医の心がけ”として普段から留意していることが2つあります。ひとつは常にベストを尽くす事、もうひとつは自分の手に負えない疾患はすみやかに二次診療機関(大学病院もしくは専門医)を紹介する事。たとえば、全身症状の認められるリュウマチや放射線照射療法の適用となる腫瘍性疾患などは後者の典型例です。

ただ、最近耳にしたことですが、特に長野県内の動物病院では大学と交流が全くなかったり学会と疎遠であるがゆえに、いざという時大学病院や専門医をすみやかに紹介出来ない動物病院も多いようです。

もちろん東大以外は紹介状がなくても外来を受付けてくれますが、その場合はふた月くらいは待たされる事があります。ここで紹介状があればもう少し事態は改善されます。それでも最近は1カ月待ちはザラとのお話。これでは急を要する場合は意味がありません。

こんな時最も良い方法は、大学病院で上級医として働いている懇意のドクターを頼ることです。事前の電話予約で通常1週間以内、遅くとも10日以内には専門医による診察が可能になります。要はネットワークを活用し先方を拝みたおした上で強引に時間をつくってもらうわけですが、大切なクライアントのため、かわいいワンコのためなら、私は結構図々しくなれる性格かもしれない・・・元来ワタシは万事控え目な性格ですが・・・。(*^_^*)