皆様から届いたご相談から掲載しています。

Q40.2才半の♂のボクサーを飼っています。たいへん健康な犬なんですが、子犬のときの断耳がうまくいかなかったせいだと思いますが、耳が片方だけ立ちません。これって手術で矯正可能でしょうか?

A40.うーん、こればっかしは実際に診てみないことにはなんとも言えません。状態によっては人工的な骨(リン酸ヒドロキシアパタイト)を耳介にそって挿入することで矯正可能かもしれません。近くの動物病院に相談なさってはいかがでしょうか?

Q39.我が家の9才になる愛犬(♂:柴犬)がフィラリアに感染してしまいました。現在近くの動物病院に入院しているのですが、犬フィラリア症の治療方法について教えてください。

A39.一般に外科療法と内科療法に大別されます。外科的な方法では、アリゲーターと呼ばれる道具を頚静脈から心臓に挿入して心臓に寄生している虫をつり出します。一方、内科療法では特殊な薬剤を投与してフィラリアそのものを殺滅します。いずれの治療方法ともある程度のリスクを伴いますから、治療に際しては担当の獣医師から十分な説明を受けられると良いでしょう。

Q38.米国には多指症(手の指が6本ある)の猫がけっこういるとうかがいましたが、日本にもいるのですか?

A38.残念ながら、私自身まだ診た事はありませんのでなんとも言えません。たしかに米国内ではさほど珍しくはないようです。これは一種の奇形と推定されますが、聞くところによると多指症の猫は非常に器用に指を使い、しかも性格がとてもユニークだそうです。もし日本国内にもいるのなら、私もぜひお目にかかりたいところです。

Q37.まだ5ケ月齢のチワワ(♀)なんですが、ほかの子犬たちに比べて成長が悪く、おまけに前足を高く上げる独特の姿勢で歩きます。まるでダンスをしているようです。これってなにか病気の兆候なんでしょうか?

A37.たぶん水頭症では?水頭症の子犬にはこんな症状を示す子犬が多く、おまけにチワワはこの疾患の好発品種です。病院で検査すれば確定がつくと思われます。

Q36.9才になるボクサー(メス、避妊済み)が左の前肢を痛がるので検査してもらったところ、離断性骨軟骨炎という診断結果が出ました。手術を勧められましたが、これは治る病気なんですか?

A36.もちろん治ります。外科の得意な先生はこの手術をかなり短時間でかつ正確にこなしますが、症状(痛み)がひどくなければ内科的治療にも十分反応します。
いずれにしても、主治医とよく話し合われて処置されたらいいでしょう。

Q35.2才になるウサギ(ロップイヤー)を飼っていますが、先日受診した病院でパスツレラ症との診断を受けました。これってどういう病気なんですか?

A35.Pasturella multocida という細菌感染によって引き起こされる病気です。主に呼吸器感染を主徴とし敗血症に移行しやすく、極めて危険な疾患です。治療の基本は抗生剤の投与ですが、重篤な結果を招くこともあるので注意が必要。

Q34.うちの猫たちは駆虫してもすぐにサナダムシ(条虫)が再感染してしまいます。サナダムシの再感染を効果的に防ぐ方法ってないのでしょうか?

A34.猫に条虫が感染する様式は以下の2つです。
(1)毛づくろいの過程でノミを食べちゃって感染する場合(猫条虫)
(2)屋外でヘビやカエルなどのゲテモノを捕食して感染する場合(マンソン裂頭条虫)
したがって再感染を防ぐにはノミの駆除とゲテモノの捕食を断つことの2点に集約されるわけですが、特に後者は猫の狩猟本能とも関係しているのでちょっと難しいかも。

Q33.来月から2年間韓国へ出張することになりました。愛犬の2頭のシーズー犬も連れていこうと思いますが、出国に際し必要な書類等について教えてください。

A33.犬を連れての出国には、「犬の輸出入検疫規則」にのっとってあらかじめ定められた様式で動物検疫所に届け出て、防疫官の行う検疫を受けなければなりません。この際、日本国内で狂犬病予防注射を接種していることを証明する「犬の輸出検疫証明書」が必要になります。
なお、具体的な措置についてはお近くの保健所にお問い合わせください。

Q32.先日、うちの愛犬が夜になって調子が悪くなり病院を受診しようとしたのですが、驚いたことに夜間受け付けてくれる病院がなくてたいへん困りました。人間にはちゃんと救急時に対処してくれる病院がありますが、動物にはないのですか?

A32.たしかに夜間救急指定はないですね。基本的に個人開業医のレベルで24時間の対応は無理です。もっとも都内には複数の獣医師がローテーションで夜間も診療してくれる比較的規模の大きな病院もけっこうあるようですからまだいいのですが、郊外に至ってはちょっと困難。
したがって、出来ることなら普段から複数の獣医師を擁する病院を選定しておいたほうがいざという時は安心かもしれません。さらに気に入った獣医さんを見つけたら事前に獣医師の自宅なり携帯なりの番号を聞いておくといいかも。

Q31.生後3ケ月の子犬を飼い始めました。春先から始めるというフィラリア予防について教えてください。

A31.犬フィラリア症は蚊の吸血により感染する犬の代表的な寄生虫性疾患です。現在は1ケ月に1度予防薬を与えることで確実に感染を防止できますから、毎年必ず予防しましょう。
なお予防薬の投与期間ですが、蚊の発生期間にはけっこう地域差があるので、具体的な投与期間につきましては、お近くの動物病院等に相談するかもしくはHDUを確認してください。

Q30.12才になる柴犬の雑種を飼っています。1年ほど前に近医でうっ血性心不全との診断のもと内服薬と専用食を処方されました。内服薬はともかくこの専用食ははたしてどの程度効果があるのか疑問なのですが・・・?

A30.たぶん心不全に処方されているので、専用食とは低ナトリウム食のことではないでしょうか?ナトリウムイオンはほとんどが細胞外液に存在して浸透圧の維持に重要な役目を果たし、つねに水と連動しています(理論上ナトリウムイオン1mEqで水3.5ccを引っ張るんです)。したがってナトリウムを制限することでむくみや肺のうっ血の程度を軽減することが出来ます。
内服薬との併用なので効果のほどがわかりにくいのかもしれませんが、ナトリウムの制限は少なくとも循環器全体にかかる負荷を軽くすることだけはまちがいありませんから、今後も専用の処方食はつづけたほうがいいと思います。

Q29.うちのオス猫(2才)はどうしたわけか尿中の結晶でおしっこが詰まりやすくて困ります。獣医さんから専用食を購入しましたが一生この食事だけというのも飽きそうでかわいそう。なにかほかに方法はないのでしょうか?

A29.うーん、むずかしい問題ですね。オス猫の尿道に砂状結晶がつまり尿路閉塞から腎不全をきたす一連の病態はFUSと呼ばれ、発見が遅れると死ぬことすらあります。基本的に猫自身の体質に起因するものなので再発しやすいので、最も確実な再発予防策は専用の処方食を続けることなのです。
ご指摘のように、同じ食事内容だけでは飽きてくることも考えられますが、そのようなときは獣医さんと相談して処方食のメーカー(ヒルズ、ウオルサム、スペシイフィックなど)を替えてみてもいいかも。
ただし市販のものにはFUS対応をうたっているものもありますが、成分表示を比較する限り、あくまで病院処方食の方がケタ違いに良いと思います。

Q28.9才の♂のハスキー犬が迷ってきたので保護していましたが、最近になってのどに異物が引っかかったような咳をするようになりました。大変おとなしい犬なので、あえて口を大きくあけて奥を見ましたが原因はよくわかりませんでした。これって病気ですか?

A28.咳には上部呼吸器の咳、下部呼吸器の咳、心臓性の咳の3種類がありますが、今回のケースは心臓性の咳の可能性があります。広い意味での循環不全が予想され、またフィラリア症でもこのような症状が高い頻度で認められますから早期に動物病院を受診されることをお勧めします。

Q27.2才になるシーズー犬を1ケ月ほど前に交配しました。いまだ妊娠の兆候はないような気がしますが、そもそも素人にも判断可能な兆候ってあるのですか?

A27.基本的に犬、猫ともに妊娠期間は62日ですが、妊娠の初期に確認できるような兆候はありません。ただし多くの場合妊娠40日齢を過ぎたあたりから乳腺の腫脹や体重増加が目立ってきますから、このような兆候を認めたら妊娠の可能性は高まります。
なお、ヒトのようなツワリや嘔吐や食欲不振はあまり明確でなく、むしろそのようなケースでは子宮内感染を疑うことがあります。もちろん確定診断には獣医師による検査が必要であることはいうまでもありません。

Q26.先日猫の3種混合ワクチンを受けましたが、その後ワクチン接種部位が腫れてきました。大丈夫でしょうか?

A26.接種部位が腫れてくる原因としては筋膜炎と肉腫が考えられます。
通常の炎症では腫れが持続することはありませんが、接種後2週間しても腫れが引かない場合あるいは活発に増殖するときには肉腫の発生が強く疑われるので早めに受診してください。実は猫はワクチンのアジュバントに含まれるアルミニウムゲルに反応して繊維肉腫をみることがあるらしいのです。なかには猫に対するすべての注射行為が肉腫発生の原因になりうると主張する研究者もいますから一応注意すべきでしょう。

Q25.生後40日齢のミニチュアダックス(♂)を飼い始めましたが、怖い病気から子犬を守るためにはワクチネーションが必要不可欠といわれました。ワクチン接種について、その種類、接種時期、接種後の注意事項等について教えてください。

A25.特定の地域を除いて、現在日常的に動物病院で扱われているワクチンは5種混合と8種混合ワクチンです。いずれもパルボ、ジステンパー、パラインフルエンザ、アデノ2型、伝染性肝炎は共通ですが、8種ではさらにコロナウイルスとレプトスピラ(2種類あります)の計3種類が追加されています。
レプトスピラの一部は人と動物の共通の病気を引き起こしますし、コロナウイルスは単独感染では毒性は低いのですがパルボと混合感染を起こすと重篤な症状を示しますので、できれば8種混合がお勧めですね。
接種時期に関しては、生後12週齢までに複数回接種、以降年1回の追加接種が原則ですが地域的な特性も考慮して主治医とよく相談してください。
また、接種後1日は安静にしてください。もし副作用が現れるとすれば接種2時間以内(アナフィラキシー)または8時間前後(Ⅲ型アレルギー)で、症状はともに顔面の腫脹です。
なおM.ダックスの一部には、家系的にアナフィラキシーを起こしやすいものがあるので要注意!

Q24.近日中に愛犬に避妊手術を受けさせようと思いますが、食事性のアレルギー体質なので手術時の麻酔でショックを起こすのでは?と心配です。大丈夫でしょうか?

A24.多くの病院で採用されている「吸入麻酔+鎮痛剤、もしくは鎮静剤」という現在のトレンデイー ともいうべき麻酔は、極めて快適で安全性の高いものです。したがって事故の確率は非常に低く、必要以上に恐れることはありません。
私たち獣医師は、手術の前には必ず健康状態をチェックしています。また麻酔に際しては、最初から確実に気道を確保して心電図や呼吸ガスや血圧などの生体モニターを監視して安全に努めています。ご指摘のようなアレルギー体質の動物でも常に安全な麻酔・確実な処置がおこなえるように致しておりますが、実のところ特異体質ということもありうるので絶対安全とは断言出来ません。ただし、麻酔や手術に限らず、あらゆる医療行為にリスクはつきものなんです、神サマでないかぎり。

Q23.うちのシーズー犬(オス、12才)は、かかりつけの病院で膀胱結石があり手術が必要と診断されました。年齢的にもおなかを切るのはかわいそうです。おなかを切らないで治す方法はありませんか?

A23.一口に膀胱結石といっても、その構成成分でさまざまな種類に分かれます。犬にもっとも一般的なストラバイト結石であれば、動物病院で処方される専用処方食を与えることで結石を溶解させるこも可能です。ただし処方食を使用しても溶解できない種類の結石では、外科手術によって摘出するしか方法はありません。具体的な個々のケースでは、担当医と十分話し合われることをお勧めします。

Q22.先日古代エジプト展でネコのミイラを見つけました。そもそもネコのルーツってどこの国、あるいはどこの地域なのですか?

A22.現在の猫は、今から5000年くらい前、リビア周辺の野生ネコが古代エジプト人によって馴化されて世界各地に広まりました。元来島国の日本には猫は存在せず、最初の猫は6世紀後半の仏教伝来とともに中国から日本へやってきたと言われています(ただし、ヤマネコに近い種類はいたらしい)。当初はペットというよりは、仏教の経典をネズミの害から守るというきわめて実用的な目的で輸入されたようです。
・・・最近はネズミを一度も見たことがないネコや、ネズミに驚いて家出しちゃうネコもいるとか。

Q21.我が家にはともに5ヶ月になる子犬と子猫を仲良く飼っていますが、近いうちに避妊去勢手術を行おうと思っています。具体的には生後何ヶ月くらいで行うのが医学的には好ましいのですか?また、手術によって性格が変わることがあると聞きましたが、ほんとうですか?

A21.子犬子猫ともに6ヶ月以降ならばいつでも手術可能です。副生殖器の十分な成熟のためには生後8から9ヶ月くらい後のほうが好ましいとする先生もいますが、最新の知見では生後6ヶ月以降ではとくに心配ないようです。
また性格についてですが、特にオス犬オス猫においては、精巣から分泌されるホルモンの支配がなくなり縄張り意識や闘争本能が抑制されて多少性格が穏やかになるようです。