4月 ×日(曇 )
今日はウサギのモモちゃん(♀・4ケ月齢)がやってきた。
やんちゃなモモちゃんは、飼い主さんが洗濯物を干すために
二階のベランダに行く際には、必ず後に付いていくのが日課です。
今日も飼い主さんを追いかけて、
いつもどおり階段をかけ上がったところ
運悪く足を滑らせ転落し、左の後ろ足を痛めたらしい。
でも来院時すでに症状(疼痛)は緩和しており、
大事に至らなかったのは不幸中の幸いでした。

ところで意外に思われるかもしれませんが、
ウサギは種類によっては結構人になれてくれます。
特に幼い頃から可愛がっていると、
まるで鳥類の刷り込み現象のような懐き方をして、
家中どこに行くのにも付いて来るようになりますよ。
4月 ×日(曇 )
ヒルズの新薬発売一周年記念の学術講習会に行ってきました。場所は品川駅近くの東京コンファレンスセンター。
講演の前半はT大薬理学教室H准教授のお話。分子レベル、細胞レベルでのかなりマニアックな内容で、かつての薬理の授業を思い出しました。(-_-;)
必ずしも臨床向きの内容ではないけれど、しっかり理解していると知識が深まり、結果として病態を正確に把握できるといったところでしょうか。暗室でのスライド上映のため、うとうとしている人もチラホラ見かけました。前日、遅くまで仕事していたのかな~?
さて、講義の後半はT大内科のO准教授のお話。
やっぱり参加者は臨床家主体なので、俄然みんなの目が輝いていました。聴講者は500~600人前後はいたと思うけど、驚くほどみんな真剣に聞き入っていました。無理もありません、たしかに講演内容が充実していてなおかつ面白かった。
企業の主宰する講演はとにかく薬の宣伝になりがちだけど、O准教授のように、必ずしも薬の紹介にとらわれず、その日一番話したい話題を、それも最新の知識をまじえてみっちり話すというのは素晴らしいと思う。
やっぱりO先生の講演は面白い!
4月 ×日(雨)
内視鏡のお話 その② 米国編
私が以前からラパロ(腹腔鏡)に強い関心を寄せていることを知っている業者が、今日はいろいろ資料を送ってきた。さすが業者は気が早い。先端技術好き、機械好きな私の性格を完全に読みきっている。
ところでこの資料の中に1枚のDVDが含まれていました。内容としては、この春米国の動物病院で行なわれた手術風景(ラパロによる卵巣・子宮摘出術)が収録されていました。
さっそく動画で再生して見ました。
手術設備からみて、かなりの症例をこなす優良病院とみた。
手術そのものは実に手馴れている様子で、術中なんら問題はありませんが、一番驚いたのは、執刀医の先生、手術が佳境に差しかかると、いきなり口笛を吹く、という行為。実にノリノリ、怖いくらいノリノリなのである。
手術室内で生体モニターの電子音やシーリング確認時の電子音に混じって、執刀医の先生の口笛がヒューヒュー聞こえてくる!
しかも中途半端な口笛じゃなくて、フシまわしがつけられて完全にメロディー。
ときどき冗談を言い合って、スタッフ一同大爆笑しながら、あっという間に手術終了。その間わずか20分。
さすがアメちゃん、、なんとも陽気である。大学時代・代診時代をを含め、今まで飽きるほどいろんな手術を見て来たけど、こんなに楽しげな手術風景ははじめて見た。
これって国民性の違いなのか、はたまたスタッフの性格なのか、見終わっても別の意味で興味が尽きなかった。
追記:
後日米国人の生態(?)にあかるい人の解説によると、アメちゃんの仕事中の口笛は必ずしも珍しいものではなく、医師に限らず日本で働く外資系金融機関のエリートサラリーマンなども、仕事が好調な時は自然に口をついて出てしまうとのこと。要はノリノリなんですね~。
ちなみに手術室での冗談は、スタッフの過度の緊張を和らげて、チームに一体感を持たせるための執刀医の責務、という説があるようです。本当かね?
4月 ×日(雨)
内視鏡のお話 その① 国内編
最近外科系の学会に行くと必ず話題に上るのがラパロ。医学界・獣医学界ではいまやとってもなじみの深いコトバですが、ご存じない方に改めて説明しますと、これは腹腔鏡という内視鏡をお腹に刺して行なわれる、より侵襲の少ない手術のこと。
(Laparoscopic surgery)
以下の画像は、実際にお腹に設置される最新のポート(器具の挿入を行なう入り口の役目をはたす)です。

このラパロ、ヒトの世界ではかなり普及していますが、獣医学領域ではいわゆる先端技術ですから、日本国内ではまだほとんど普及していません。
一方、米国獣医界ではある程度普及しており、避妊手術のほか肝臓・胆嚢の手術に汎用されているようです。
もっとも、米国で認められた医療技術はわりと早く日本国内に導入される傾向がありますから、今後は国内でも広く普及するのかな?
4月 ×日(雨)
新たに獣医学部誕生?
愛媛新聞の報道によれば、近い将来四国にはじめての獣医学部が設立されるらしい。四国には獣医師養成機関が存在しなかっただけに、これはいいかもしれません。
近年獣医師不足が急速に進んで(特に公衆衛生や食肉行政に携わる公務員獣医師)、全国各地に悲鳴を上げる自治体が増す中、いよいよ国も本格的な獣医師増加を目指して動き出したようです。
農水省は今月2日までに、獣医療の体制を整備するためのむこう10年間の基本方針案を公表し、獣医師会に対し労働環境の重点整備を約束しましたが、目的はもちろん行政にたずさわる獣医師の確保。
もっとも、焦ったところで獣医学部は非常に少なくて全国で年間1000人くらいしか卒業しませんし、卒業生の6割はこの不況下でも臨床志向ですから、今後20年くらいは確実に深刻な地方公務員獣医師不足が続くといわれています。
このような状況下で、新たな獣医学部の設置は問題の解決につながるのでしょうか?
以下は愛媛新聞からの抜粋です。
愛媛県と今治市が構造改革特区制度で国に提案していた今治新都市への大学獣医学部設置許可について、過去4回の提案を「対応不可」と門前払いしてきた文部科学省が、5回目の提案に対する最終回答(2月23日付)で「提案の実現に向けて対応を検討」と従来とは異なる姿勢に転じたことが9日、分かった。
同日の県議会本会議で、本宮勇氏(自民、今治市・越智郡区)の一般質問に対し、高浜壮一郎副知事が明らかにした。(愛媛新聞)
3月 ×日(晴)
獣医師の自殺率って?
日本国内での年間自殺者数が3万人を越えて社会問題化していますが、近頃英国で獣医師の自殺率が一般の4倍の水準に達するとの調査結果を、大学院博士課程の医師が発表しました。医療従事者と比べても2倍で、様々なストレスが原因ではないかと指摘しています。
以下はCNNによる報道の全容です。
「(CNN) 英国で獣医師の自殺率が一般の4倍の水準に達するとの調査結果を、サウザンプトン大学医学部の大学院生がまとめた。医療従事者と比べても2倍で、様々なストレスが原因ではないかと指摘している。
同大学で精神衛生学の博士課程に在学中の医師デイビッド・バートラムによると、英国の獣医師1万6000人中、毎年5─6人が自殺しているという。
はっきりとした原因は不明だが、獣医学部時代から始まる訓練や実際に獣医師として働く現場で、過酷なストレスを受けていると推測。また、自殺に使える薬物が周囲にあり、思い立った時にすぐ入手出来る環境が遠因とも見ている。
このほか、日ごろの治療で遭遇する困難で安楽死が最適な解決方法とする傾向に陥りがちとなり、これが自らの私生活に反映されるのではないかとも分析している。」
ところで日本国内の状況は・・・といえば、英国ほど顕著ではないと思います。むしろ、個人的には国内平均と大差はないと信じたいのですが、大学の同級生わずか100人たらずですでに自殺者が出ている現実をみると、実は国内でも高い部類に入るのかもしれない。
3月 ×日(晴)
坂本龍馬と記念撮影
高知で学会があり、行ってきました。
NHKの大河ドラマ「龍馬伝」の影響か、高知空港は龍馬一色。
最近は、高知空港改め「高知・龍馬空港」と呼ぶそうな。

どういうわけか、この日は空港内に複数の芸能人がうろうろしており、一般の人が押しかけて記念撮影をしていました。
私は芸能人にはほとんど興味無いので、ロビーにある龍馬のスタチューで記念撮影をしました。
3月 ×日(晴)
送別会
今日は送別会です。
長らく当院でトリミング業務に専心してくれたスタッフのひとりがこの春独立して、夢だったトリミングサロンを開業するはこびになり、今月末で退社です。
下の画像は、彼女のすきなイタリアンで、彼女の将来を祝して、みんなで乾杯したところ。

彼女は開業当初からのメンバー(6年間勤めてくれました)だけに、ちょっと寂しくなります。(-_-;)
みんな仲が良くて今日まで最強・最高のメンバーで来たけど、今後機会を得て、彼女の代わりが務まるくらいの優秀なスタッフを探さねば・・・。
3月 ×日(晴)
椎間板ヘルニア・・・その②
きょうはミニチュアダックスの海老蔵ちゃん(♂・3歳・obey
! )がやってきた。数日前に電話で相談があった子で、「下半身に全く力が入らない、おしっこもままならない・・・」とか。
聞けば発症したのは3週間前で、近くの病院で椎間板ヘルニアの可能性を指摘され投薬を受けていたものの、改善の兆しもなく、さじを投げられた格好。
やばいな、こりゃ。本当に椎間板疾患とすれば、時間的な経過から手術のタイミングを逸している可能性が高そう。確実な回復を願うなら、理想的には急性期から24時間以内が手術の適期。
実際検査で確認すると、T13-L1間・L1-L2間に椎間板の逸脱による神経圧迫(椎間板のヘルニア)が認められました。ここって、ダックスの椎間板ヘルニアの70%はこのエリアに発生するといわれる「超危険領域」。なんと海老蔵ちゃんは典型例にはまっている!
こうなってしまった以上、回復の可能性を期待できる治療は外科手術しかありませんが、麻痺の経過が長いだけに、たとえ手術がうまくいっても、神経機能が十分に回復しない(=後足の麻痺や膀胱の麻痺等後遺症が残る)可能性も考えられます。もちろん前述のキャバリアちゃんのように、処置が早けりゃ回復の可能性も高いのですが・・・。
海老蔵ちゃんの場合、発症時期を考慮すると現段階で手術での機能回復はどう贔屓目に見ても50%以下といったところでしょうか・・・。(>_<) こういうケースはどんなに細部にわたって説明を受けても、飼い主さん自身判断に苦しむところと想像しますが、獣医師側としても本当に本当に悩むところです。 なぜなら、時期を逸した椎間板ヘルニアの手術は、骨折の整復手術のように、飼い主さんに対して「手術の成功=完全な機能回復」を約束できませんから・・・・。かといって、諦めるには実に惜しい状態。 海老蔵ちゃんの今後が心配・・・。(-_-;)
3月 ×日(雪)
椎間板ヘルニア・・・その①
まずはこの画像を見てください。

現在当院で椎間板ヘルニアの術後リハビリ中の子です。
椎間板ヘルニアは術後劇的に改善するワンコがいる一方で、高齢で発症したり、ほかに重い病気を抱えている子では、回復に時間のかかるケース(=平均2ケ月前後)も珍しくありません。
画像の子も当初リハビリは2ケ月くらい必要かと思われましたが、きついリハビリにもよく耐えてくれて、治療に協力的なこともあって、ほぼ3週間でわずか2、3歩ですが、なんとか歩けるまでに回復しました。
全快までもう少しの辛抱です
当初歩けなかった子が歩けるようになる過程はとてもコトバでは言い表せないほど感動的で、毎度のことながら獣医師になって本当に良かったと思う瞬間でもあります。