2月  ×日(雪)          

久しぶりに、東大動物医療センターに行くことになりました。
普段私を含めスタッフが直接東大に動物を連れていくことはありませんが、特別な事情があって飼い主さん自身がどうしても東大まで連れていけない場合に限り、当院では、当院スタッフが代行して受診をサポートします。

このような時は大概AHTスタッフに出向してもらうのですが、今回術後から退院後しばらくの間、かなり特殊な理学療法を必要とするケースなので、退院時念のため私が行くことになりました。

ところで、近年獣医療における理学療法の進歩にはめざましいものがあります。以前は整形外科の一分野みたいな位置づけでしたが、2年ほど前米国獣医界がその有効性・必要性を認めて以来、日本国内でもがん治療と並ぶホットな分野になりつつあります。

さすがに日本の獣医界ではまだヒトの医療のような理学療法士(PT)は存在しませんが、米国では獣医整形外科医の多くがこの資格も保有しているようです。獣医学に関するかぎり、米国の優位は今後もゆるぎないものなのだろう。

2月  3日(晴)          

今日は節分です。
近くのスーパーで福引があったそうで、家人がくじを引いたところ
なんと特等!大きな赤いダルマさんと副賞の商品券をGET!
ダルマさんにもシートベルトを締めて、助手席に大事に大事に乗せて帰ってきた。こんな大きなダルマさんを手に入れたのははじめてかもしれない。さっそく神棚に飾りました。

最近はダルマさん自体目にする機会が減っている気がします。そういえば、当院を建ててくれたゼネコンの担当者も、「最近は神棚を設置しない家も結構増えているんですよー」と言ってたっけ。

もっとも、東京都内で代診をしていた頃、往診先で大きな大きなダルマさんを見たことがありました。ただし、赤いダルマさんではなく、真っ黒のダルマさんで、中央に金文字で●●会。

通された部屋を見渡すと、黒ダルマさんに混じって数々の提灯が飾られておりビックリ。そっか、ここは某団体の関係先(組事務所?)なんだ・・・とひとり納得。

以来黒いダルマさんには一度もお目にかかることなく今日に至っています。黒いダルマさんは特注だけに思いっきりスタイリッシュで威厳に満ちていたけど、やっぱり私は従来の赤いダルマさんが好きです。

ちなみに最近は白や黄色、金色のダルマさんも増えてきたと言われていますが、そもそも赤い色には魔よけの効果があるとか。黒はないみたい。

いらっしゃい、ダルマさん、今年も早々に縁起がいい!

 1月  ×日(晴)          

ビートたけしと安住アナの出ているニュースショー番組を見ていたら、ある女優さんが都内のイケメン獣医師と交際中と報道していました。聞くところによると、どうやら大学の後輩らしい。ほう、新年早々おめでたいことです。
お幸せに~(^_^)

ところで私も高校生の頃、本気で「映画俳優になりたい!」と考えたことがありますから、俳優とか女優という仕事には、正直今でも心惹かれるものがあります。ただ、こういう話をすると、大概冗談と思われてしまうんですよね~。

ちなみに私の好きな俳優は西田敏行や原田芳雄のような演技派。
かつてTVドラマ「白い巨塔」で見せた西田敏行の産婦人科医役はいい味を醸しだしていてさすがでした。
また最近では、TVドラマ「不毛地帯」における原田芳雄演じる大門社長役も、主役の壱岐正役を演じる唐沢寿明をくっちゃう仕事ぶり。圧巻です。

必ずしも輪廻転生を信奉しているわけではないけど、もし生まれ変わることがあったら、来世では、私、絶対俳優にチャレンジしたいと思う。

1月  ×日(晴)          

久しぶりに東京ミッドタウンに行きました。今日は、この1階にあるフジフイルム本社にて、ダニー・ブロックマン教授(ロンドン大学王立獣医学校)の講演です。

予定より早く着いたので、午後の聴講を前に昼食をとりたくなりました。さいわい階下のフードコーナーにはおいしいカレーのお店「デリー」があります。
というわけで、本日の昼食はデリーに決定!

ここで最強の辛さを誇ると評判のカシミールカレーをオーダーしたところ、待つこと15分、まるでスープのようなカレーが出てきた。
見た目は普通ですが、一口食べてみたら、これが恐ろしいくらいの激辛!普通のインドカレーが砂糖に思えたくらい(@_@;)

しかし辛いだけじゃなくてたしかに美味しい。さまざまな香辛料の香りがして奥深い味わい。

ああ、あまりの辛さで自律神経のバランスが崩れそう~~~。食べ終わる頃には顔面だけに汗をかき(なぜか体には汗をかかない。不思議)アタマがクラクラして、なんと舌の先端までビリビリ痺れてきた。大丈夫かな、オレ。

さすがにこれだけ辛いものを食べると、食後の眠気なんてぶっとんじゃって、意外に講義に集中できることを発見!本日は午後1時から5時まできっちり勉強できました。\(~o~)/

1月  ×日(晴)          

今日はミニチュアダックスのクレバーちゃん(♀・3歳)が激しい嘔吐を主訴としてやってきた。飼い主さんいわく、「噴射状に戻してしまう!」、とのことで、来院当初は幽門の狭窄か幽門痙攣を想定して手術の準備までしておりましたが、しつこいくらい徹底的に検査をしてみたら、なんとこれが「嘔吐」ではなく「吐出」。

「嘔吐」と「吐出」は一見似ていますが、実はまったく異なる仕組みです。

「吐出」を実際の画像で確認すると、極度の食道拡張があって(巨大食道もしくは食道憩室)、まだ胃に達する前の食事内容が食道にたまっており、これを受動的に吐いている状態。

ただ、ミニチュア・ダックスの巨大食道はじつは重症筋無力症による症状のひとつであることがあり、診断には他の犬種に比べ細心の注意が必要です。

さいわいクレバーちゃんの全身状態は必ずしも緊急を要するほど衰弱していないので、しばらくは定石どおりの「立位の食事」で様子をみることになりますが、ゆくゆくは大学での詳細な検討が必要になるかもしれません。

それにしても、ミニチュア・ダックスは扱いの難しい病気が多いですね。

2010年 1月  ×日(晴)          

今年の干支はトラ、さすがに私自身はトラを診療することはありませんが、過去においてトラの診療に携わっていたドクターが2人ほどいます(いずれも大学の先輩)。

ひとりは千葉のマザー牧場近くのお寺で飼われていた、あのトラ騒動(ずいぶん古い話です)のトラを診ていました。そしてもうひとりは、たしか野毛山動物園に関係していた先輩だったと思う。

こちらの先生、もしかしたら相手はトラじゃなくてライオンだったかもしれない。いずれにせよ、先輩がネコ科の大型猛獣にケタミンを注射して(もちろん麻酔銃で!)さまざまな外科処置を施していた記憶があります。

ケタミンは、昨年末某歌手が違法に所持・使用したかどで逮捕されて有名になりましたが、今でも「ネコ科動物の最も信頼のおける不動化薬」といわれるだけあって、よく効くんです。トラやライオンも投与後5分でコロっと寝込んじゃいますからね~。

ところで野毛山動物園といえば、その近くに、あのキタナミシュランで有名な餃子の美味しいお店があるとか。店の主人のキャラクターがとんねるず石橋のキャラを凌駕していただけに、料理もさることながら、あの主人のキャラを求めてぜひ一度行ってみた~~~い!(~o~)

12月  ×日(晴)          

今日はトイプードルの仔犬、クララちゃん(6ヵ月齢・♀)がやってきた。最近元気がなくて、今朝は失神したとのこと。ディフェレンタルチアノーゼを示しているため、重篤な心疾患を患っていることは間違いなし。慎重に心エコーで確認すると、どうやらPDA(動脈管開存症)みたい。これは仔犬に多い心臓の奇形です。(>_<)

やばいな、こりゃ。はやく穴をふさがなきゃ体が持ちません。もっとも安全確実な方法は、レントゲン透視下で血管からコイルを入れて穴をふさぐこと。いわゆるインターベンショナルラジオロジーの出番です。

ただここまで行くと、個人開業医のレベルを超えるワザですから、診断は下せても治療は大学病院に依頼せざるを得ません。 年末だけに、大学病院も入院を伴う予約診療には限られた枠しかありませんが、、そこは長~い長~い付き合いです、なんとかかんとか緊急の理由を並べて無理をいって、2日後に外科の予約を取りました。(~o~) 自分でも大学に対して「ワガママ言って悪いな」と自覚をしていますが、少なくとも私を信頼して頼ってくる飼い主さんの希望だけはなにがなんでも応えたいと思うとこうなっちゃうんです。 m(__)m クララちゃんが元気な姿で2010年を迎えられますように!!!

12月  ×日(雨)          

早いもので今年も残すところあと半月、あっという間の1年でした。毎年年末になると、今度こそはゆっくり休みたいなあ~、と願うのですが、なぜか毎年12月半ばから30日あたりの後半は重篤な疾患を抱えて病院はてんやわんや。

今年もすでに10日すぎから重症のワンコ、ニャンコがぞくぞくとやってきています。

ここ数日は、拡張型心筋症(=おそらく遺伝性)、尿管結石(猫)、膵炎(=なぜかシェルティーに多い)、急性腎不全(シーズー)、胆嚢粘液のう腫(=オペのタイミングが難しい)、アジソンクリーゼ(=最初の処置を誤ると危ない!)・・・、もうなんでもありといった様相。

忙しい時に限って、対応の難しい疾患ばかりが重なってくるから不思議です。

毎年「今年こそは仕事の緊張から解き放たれて、静かに安らかな気持ちで年末年始を過ごしたい!」と願うけど、この仕事をしているかぎり、そんなワガママは許されないのかなあ。

11月 29日(曇)          

今日は大野先生(=東大内科准教授)の講演を聴きに、都内まで出かけてきました。大野先生の講演はいつもながら盛況で、人気の理由はなんといっても、最新の知見を踏まえて建前ではなくホンネで講演してくれること。

たとえば従来の学術書などでは慎重を期して
「疾患Aの診断にX線検査はさほど有効でない」と記載されるところ、大野先生の講演では、はっきりと
「疾患AにX線検査はほとんど無意味」、
さらに
「ここはエコー検査が勝負を分ける!」
とまで言い切ってしまう。

ところでホンネを話してくれるという意味では、整形外科で有名な○山先生も人気があります。○山先生はあくまで個人的な質問に答える形でしか教えてくれませんが、親しくなると、さまざまな手の内を披露してくれます。桁違いの臨床経験に裏打ちされているだけに、その内容がためになります。
たとえば、ある手術に際し、

「神経Aと神経Bは命がけで保護しなればならない。傷つけると術後重い後遺症が残るから。」

「神経Cと神経Dは出来るだけ保護すべき、ただし、もし誤ってダメージを与えても、術後障害を生じる可能性は低いから動揺しないこと。」

「神経Eは保護するに越したことはないが、最悪切れても臨床上障害は生じない。思い切って仙腸関節にスクリューを打ち込むべし!」
といった調子ですべての指示が極めて明快。

単なる医学知識や情報の収集だけならテキストを読めばよく、わざわざ手間暇かけて遠くまで出かける必要はありませんが、このように「生きた知識」を吸収できることこそ、学会参加の醍醐味だと思う。

11月 ×日(曇)          

山崎豊子の最新刊「作家の使命、戦後の私」を読んでいたら、かつて愛犬を事故で亡くされたことがエッセーに描かれていました。お話そのものは昭和30年代後半、まだ動物病院が全国的にもかなり少なかったころの出来事です。

動物病院が少ない頃・・・とは言っても、そこは大阪、国内第二の大都市ですから、すでに近隣に動物病院が複数あって、かかりつけの先生はK獣医科病院のK先生だっという。

驚きました。K先生、今ではこの業界で知らない人はいない超有名人ですが、すでにその当時から辣腕をふるわれていたんですね。エッセーそのものはちょっと悲しい話ですが、最後に発せられたK先生の言葉に救われました。私とは親と子ほどの年の差もあってもちろん面識はないけど、さすがK先生だと感心しました。

ところでこのK先生がなかなかのアイデアマンで、自身でさまざまな医療器具を開発して特許も取得されています。私の記憶が正しければ、たしか獣医療発明学会の役員もされていたような気がします。

このような「個性的でユニークな先生は、なぜか関西から西日本にかけて多い。一言で獣医師といっても、結構地域性があるのだ。